スマートは、粋なことですよね。smart と書いて、「スマート」と訓むこというまでもありません。
スマートのもともとの意味は、「利口」ということだったそうですが。
利口と関係あるのかどうか、昔「スマート・ボール」というのがありましたね。ちょっとパチンコにも似たゲーム。スマート・ボールは台自体が斜めになっているのが、特徴だったのですが。
「………東京の芝居や音曲にはさすがに江戸人のきびきびとしたスマートな気質が出ているのに………」
谷崎潤一郎が、昭和四年に発表した小説『蓼喰ふ虫』に、そのような一節が出てきます。
谷崎潤一郎の『蓼喰ふ虫』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。
「白っぽいホームスパンの上衣の下に鼠の スウェーターを見せて、同じ鼠のフランネルのパンツを穿いた高夏は………」
これもまた、スマートな着こなしなのでしょう。事実、谷崎潤一郎御本人もホームスパンがお好みだったそうですが。
「………やはり欧羅巴でお暮しになっていらしただけに、日本人ばなれしたスマートな………」
大佛次郎の『帰郷』にそのような会話が出てきます。これは左衛子が、伴子に語る内容として。
また、『帰郷』にはこんな話も出てきます。
「悉く、標準型で、ショウウインドウ趣味なんですよ。崩すことも作ることも知らないのだ。」
戦後間もなくの外国の着こなしについて。
スマートが出てくる小説に、『城砦』があります。スコットランド出身の作家、クローニンが1937年に発表した物語。
「ハムスンというのはいい奴ですよ。ロイヤルの伊達な定連とでもいつた風でね、スマートな奴ですよ。」
また、『城砦』には、こんな一節も出てきます。
「………短いゲートルをつけ、縞ズボンをはいて、真珠のピンをさした、色の浅黒い伊達者のガベル医師と………」
このガベル医師の「短いゲートル」。これはたぶん「スパッツ」spatsのことかと思われます。
1920年代の洒落者の間では大流行となったものです。もともとは「スパッターダッシーズ」と呼ばれた靴の泥よけだったのですが、時代とともにスマートになって、とうとう男の足許のアクセサリーとなったものです。
どなたか現代版のスパッツを作って頂けませんでしょうか。