コンブレエとコルドワン

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コンブレエは、フランスの地名ですよね。シャルトルから西に、約20キロの場所にあります。小さな、静かな町。
これほど小さくて、これほど有名な地名も珍しいのではないでしょうか。それも、もともとは空想上の地名なのですから。
コンブレエは、実在の、イリエのことです。1971年からは、「イリエ・コンブレエ」と地名変更しています。あまりにも多くの人が。「コンブレエはどこですか?」と訊ねるもので。
1971年は、プルーストの生誕百年を記念してのことです。マルセル・プルーストは、名作『失われた時を求めて』の中で、実際のイリエのことを何度も何度も「コンブレエ」と書いています。
プルーストの『失われた時を求めて』は、ただの傑作であるのみならず、二十世紀最高の長篇でもあります。さらにはこの大長篇、未完だというのですから、驚く以外にありません。
でも、それにしても、小説から地名が変更される例もそれほど多くはないでしょうか。『失われた時を求めて』がいかに偉大なのかを物語っています。
『失われた時を求めて』が、ひとつのマドレエヌからはじまるのは、よく識られたところでしょう。

「プチット・マドレーヌは、それを眺めるだけで味わってみないうちは、これまで何ひとつ私に思い出させはしなかったのだ。」

マルセル・プルーストは『失われた時を求めて』の中に、そのように書いています。
マドレエヌ。それは小型のマドレエヌだったのですね。その場所が、コンブレエだったのも言うまでもありません。
今のイリエ・コンブレエには、当時、父方の別荘があって、幼少期のプルーストはしばしば、その地を訪ねているのです。
マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』を読んでいると、こんな文章が出てきます。

「コルドバの古皮を用いた巾着の、香りの高いくすんだバラ色のさわやかな口を開けており」

二十世紀のはじめのフランスに、コルドバ革製の巾着があったのでしょう。
コルドバの古い革が。羨ましい。十九世紀のコルドバ製かも知れませんね。
「コルドワン」corduan のフランス語には、「コルドバ革」の意味があります。
その昔、スペインのコルドバで鞣した革だったので、その名前があるのです。
どなたか十九世紀のコルドワンでブローグを作って頂けませんでしょうか。

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