イギリスとインヴァーネス

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イギリスは、英国のことですよね。これは直接にはポルトガル語の「イングレス」から来ているんだとか。イングレスの音を、「英吉利」の文字に変えて生まれた言葉なのでしょう。
イギリス式の家具がお好きだったお方に、江戸川乱歩がいます。

「………イギリス十七世紀ジャコビアン様式の『僧院食卓』というものに似て………」

江戸川乱歩の随筆『私の机』にそのように書いてあります。大きさは畳一枚分のチーク材。昭和八月頃に、「三越」で作らせた洋机だったとも書いています。
江戸川乱歩が筆名であるのは、言うまでもないでしょう。本名は、平井太郎。アメリカの作家、エドガー・アラン・ポオに因んで、江戸川乱歩としたものです。
では、平井太郎はいったいいつ、エドガー・アラン・ポオの存在を知ったのか。

「初めてポー及びドイルを読み、短篇探偵小説の妙味を知る」

大正三年の平井太郎の『日記』に、そのように書いてあるとのことです。平井太郎が二十一歳の時の話になります。
江戸川乱歩著『探偵小説四十年』に、そのように出ています。『探偵小説四十年』には、いろんな話が出てきて、興味がつきません。

「………同席した牧逸馬君が、後の丹下左膳の作者にも似げなき、無口なハニカミ屋の文学青年であったことが今も目に浮かぶようである。」

大正十四年頃の話なんですが。そのころ、東京、江戸川近くの鰻屋で若い文士の集まりがあって。平井太郎はそこではじめて「牧 逸馬」に会っているとのことです。

江戸川乱歩はおしゃれにも深い関心があって。

「………西洋のエンビ服の上に着るインバネスコートそのままの形が、かえって和服に調和するのではないかと考えるようになった。」

昭和二十八年の随筆『外套と帽子』に、江戸川乱歩はそのように書いています。これは江戸川乱歩が三十歳の時の話として。1924年頃のことでしょうか。
乱歩は着物の上に羽織る外套に工夫して、インヴァーネスを改造して重ねたことあると、書いています。
「インヴァーネス」inverness は、スコットランドの地名から出た言葉です。
インヴァーネスに似たものに「二重回し」があります。
二重回しは、着物の上に羽織るので、着丈が長い。インヴァーネスは洋服の上に重ねるので、それほど着丈は長くない外套なのです。
どなたか現代版のインヴァーネスを仕立てて頂けませんでしょうか。

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