ストッキングは、長靴下のことですよね。たいていは腿のあたりまであります。
stockingと書いて、「ストッキング」と訓みます。英語としてのストッキングは、1583年頃から用いられているんだそうですね。
これは「ストック」stock から来ているんだとか。木の枝に似た編棒で編んだからです。
十九世紀のストッキングは主に、絹靴下。女たちは手袋を嵌めた手で、ストッキングを履いたという。せっかくの絹靴下を指先で傷めないように。いわゆる「電線」が恐かったのですね。
この絹靴下に革命が起きるのが、1938年のこと。アメリカの「デュポン社」によって。もちろん、ナイロン・ストッキングの登場であります。
ストッキングが出てくる短篇に、『ピンクのストッキング』があります。チェホフの物語。
「薄いブラウスに、ピンクのストッキングをはいた小柄な、美しい女性だ。」
これは「マダム・ソモフ」の様子として。「ブルー・ストッキング」の対照としてのピンク・ストッキングなのですが。こうなると、ストッキングの色によって意味が異なってくるんですね。
1974年に、安部公房が発表した戯曲に『緑色のストッキング』があります。
「(ポケットから、緑色のストッキングを引き出す。眺め、それからやさしく愛撫しはじめる)おれの一番のお気に入り………」
たしかに男にとってのストッキングは、悩ましいものではありますが。
ストッキングが出てくる小説に、『イタリアの手記』があります。ドイツの作家、ハンス・カロッサが、1948年に発表した物語。
「………それからベルトとストッキングと手袋と小さな薔薇の花輪。すべてがまばゆいばかりの白さだった。」
これは天使に扮している少女の姿として。白のストッキングには、純粋な印象がありますよね。
また、『イタリアの手記』には、こんな描写も出てきます。
「………ズボンに幅広い赤いすじを入れたその姿は、私たちの国では将軍にしか許されないが、………」
こんなイタリアで見た憲兵の姿として。
「幅広い赤いすじ」たぶん「側章」のことでしょう。
「ストライプス」strips は、側章の意味にもなります。
ズボンのストライプスは、もともと、脇縫い目を隠すためにはじまったものです。
どなたかストライプスの美しいトラウザーズを仕立てて頂けませんでしょうか。