コルシカとコル・ロオレ

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コルシカは、地中海に浮かぶ島のことですよね。コルシカ島は日本でいえば、広島県くらいの大きさなんだそうです。
コルシカ島はまた、ナポレオン・ボナパルトが生まれた場所としてもよく識られています。
ナポレオン・ボナパルトは1769年8月15日、コルシカのアジャクシオに於いて、誕生。アジャクシオは今、コルシカ空港のある所なのですが。
1971年にコルシカに旅した作家に、大岡昇平がいます。大岡昇平はその翌年に随筆『コルシカ紀行』を発表しています。

「オルリイ空港の窓口へ行き、ボストン・バッグを計量器の上に乗せたら、窓口嬢が「これくらいの荷物、持てないんですか」といった。」

大岡昇平は『コルシカ紀行』の中に、そのように書いてあります。1971年9月25日、土曜日の朝、7時40分のこと。
大岡昇平はオルリー空港を発って、1時間20分後に、コルシカのアジャクシオ空港に着いています。

「そのレストランのテラスへ座った。雨で車の往来がとまり、涼気あり。生き返ったような気がする。シュリンプのカクテルと肝臓の煮こごりを注文。「岬」地方のブドウ酒ですっかり落着いた気分になった。」

大岡昇平は『コルシカ紀行』に、そのように記しているのですが。これはサン・ニコラ広場に面したとあるレストランでの昼食として。
大岡昇平の『コルシカ紀行』は長文。コルシカへの旅に持ってゆくと、重宝することでしょう。
大岡昇平は『コルシカ紀行』を書いたのみならず、小説『マテオ幻想』をも仕上げているのです。
同じく『コルシカの脱走兵』も。『島』も。『凍った炎』も。『ナポレオンの眼』も。
これらの小説は、すべてコルシカが物語の背景になっています。
大岡昇平はなぜ、コルシカ島に興味を持ったのか。それは1960年代に、メリメの小説『マテオ・ファルコーネ』を読んだことと関係しているのでしょう。
メリメの『マテオ・ファルコーネ』は、1829年の発表。もちろんコルシカ島が物語の背景。その後に発表した『コロンバ』も同じくコルシカが背景に描かれています。

「良い銃が一挺と火薬と弾薬があれば、安全に暮らしてゆける。頭巾つきの褐色のマントも忘れてはならない。」

メリメは『マテオ・ファルコーネ』の中に、そのように書いています。もし何かの罪を犯したとしても、ポルトヴェッキオのマキに隠れるに限る、と。
ここでの「頭巾つきの褐色のマント」は、「ピローネ」pilone のこと。野宿の際には毛布代わりになるので。

コルシカが出てくるフランスのミステリに、『危険なささやき』があります。1976年に、フランスの作家、J・p・マンシェットが発表した物語。

「コッチョリっていうのはコルシカの名前かそれともイタリアの名前か? 」

これは私立探偵のタルポンが、警部のコッチョリに尋ねる場面での科白として。この問いに対して、コッチョリ警部は答える。

「イタリアの名前だ。だが、わたしはコルシカ人だ。」

コッチョリはコルシカに多い姓なのでしょうか。また、『危険なささやき』には、こんな描写も出てきます。

「グレーのフランネルでできた太いズボンに、包装紙のような色をしたタートルネックのセーター。」

これは自宅でのエコンという男の着こなしとして。
「タートルネックのセーター」。フランスなら、「コル・ロオレ」でしょうか。「巻いた襟」と表現するのですね。昔の日本なら、「とっくり頸」と呼んだものですが。
どなたか淡いベージュのコル・ロオレを編んで頂けませんでしょうか。

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