マーケットとマック

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マーケットは、市場のことですよね。ただ単に「市」ということもあります。たとえば、「ノミの市」だとか。あるいは、「朝市」だとか。
ヨオロッパの町を歩いていると、野外のマーケットを見ることがあります。定期市ですね。食料品から衣料品に至るまでの生活用品が並べられています。
野菜などもたいていはそれを作った人が売りに来ているのですから、新鮮で安いのも当然でしょう。
ハムやソーセージ、バターやチーズなども専門店が軒を並べています。もちろん、パン屋なども。
ということはパンとハムとチーズとを買って、自分で勝手にサンドイッチを作ることだってできるわけですね。
パリやミラノの街なかには、常設の、定期市も珍しくはありません。

「東洋ニハ、絶テナキ事業アリ、ドック マーケット バンク エキステンチ 及ヒコンメルス等是アリ」

『米欧回覧実記』に、そのように説明されています。場所はサンフランシスコでの見聞として。
久米邦武が明治十一年に発表した記録が、『米欧回覧実記』なので実際の見聞は、明治四年のことなのですが。
明治四年十一月十二日に横濱港を出て、同じ年の十二月六日に、サンフランシスコに着いています。ここに「エキステンチ」とあるのは、エクスチェンジ、つまり「両替商」のことかと思われます。
『米欧回覧実記』は、明治十一年十月に発行されて、一冊四円五十銭だったそうです。発行部数、五百部。よく売れたんだとか。それはともかく、日本ではじめて「マーケット」の言葉が用いられた例ではないでしょうか。

マーケットが出てくる小説に、『忘却の河』があります。福永武彦が、昭和三十九年に発表した物語。

「雑貨屋と教えられたが、それは一種のマーケットで、客が大勢立て混んでいた。」

これは香代子という女性が昔別れた「初ちゃん」というお姉さんのように思っていた人を訪ねる場面として。
場所は笛吹川の近くに設定されているのですが。

マーケットが出てくるミステリに、『囁く影』があります。ジョン・ディクスン・カーが、1946年に発表した物語。

「マーケットの立つ日は ー
それは大変。牛の啼き声は悪魔の吹き鳴らす角笛のようで、売り手が牛に劣らず大きな声でわめきたてる。ずらりと並んだ露天の前には買物する人びとでごったがえす。」

これはフランスの、シャルトルの町近くということになっているのですが。また、『囁く影』には、こんな描写も出てきます。

「仕立てのいいスーツと白いブラウスの上に防水外とうをはおり、片腕に雨傘をかけていたが」。

これは新聞記者のバーバラ・モレルの着こなしとして。
「防水外とう」。ここでの原文は、「マック」mac になっています。
もちろん「マッキントッシュ」mackintosh の略語として。また、macintosh と書くこともありますが。
これはスコットランドのチャーチルズ・マッキントッシュが考案した防水布なので、その名前があります。
チャーチルズ・マッキントッシュは、1823年6月17日に特許を得ています。特許番号は、「4804」だったそうですね。
マックには、ゲール語で、「息子」の意味もあります。仮にマッキントッシュなら、「イントシュの息子」と、解せなくもないのです。
どなたかマッキントッシュの生地で外套を仕立てて頂けませんでしょうか。

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