カナリアは、小鳥の名前ですよね。
カナリア。昔の日本では、「金糸雀」とも書いたんだとか。
あるいはまた、「カナリー・イエロー」。色の名前にもあります。
日本にカナリアが伝えられたのは、1782年の頃と考えられています。オランダ船によって運ばれて来て。
「初めて江戸駿河台辺の人これをもとめて庭籠にて子を生しめ金高を得たり。」
1797年頃の古書『俚言集覧』(太田全斎著)に、そのように出ています。
カナリアの原産地は、アフリカ大陸に近い、カナリア諸島であるらしい。
この珍しい小鳥がスペインやポルトガルに伝えられたのは、十四世紀のことなんだそうですね。
1478年には、フランスのルイ十一世が、多くのカナリアを購入したとの記録があります。
「カナリアはさえずり、喉の羽毛が立った。そのうち嘴をさげると、カナリアはまた羽毛をそれで突っついた。」
アーネスト・ヘミングウェイが1930年代に発表した短篇『贈物のカナリア』に、そのような一節が出ています。
これは物語の主人公が、マルセイユから巴里に向うコンパートメントの中で偶然、アメリカ婦人と同席する場面。
このアメリカ婦人は、娘への贈物として、イタリアのパレルモで、カナリアを買って持っていたので。値段は1ドル50セントだったとも書いてあるのですが。
1927年に『カナリア殺人事件』を書いた作家が、ヴァン・ダイン。
ヴァン・ダインの第一作が、『ベンソン殺人事件』。その第二作目ということになります。
もっともここでの「カナリア」は、ある女優の愛称。たぶん歌がお上手だったのでしょうね。
1928年にヴァン・ダインが発表したのが、『グリーン家殺人事件』。
この『グリーン家殺人事件』を読んでおりますと。
「シベラがシガレットをふかしながら、片手で派手な緑色のセーター・ジャケットのポケットに突っこんで、ぶらりと入ってきた。」
ここでの「シベラ」は、シベラ・グリーンのこと。グリーン夫人の娘。
「セーター・ジャケット」の言い方もあったのでしょうか。
私たちがごくふつうに、「カーディガン」と呼んでいるものでしょう。
「カーディガン」は、1868年頃からの英語。
1854年のクリミア戦争で生まれた前開きのニット・ウエア。第七代カーディガン伯爵の考案なので、その名前があります。
仮に負傷していても、脱ぎ着に便利であるように。それ以前のニットは、プル・オーヴァー式だったので。
どなたか純白のシルクのカーディガンを編んで頂けませんでしょうか。