テレビは、面白いものですよね。テレビは小さい頃からよく観ていました。
たとえば、『奥様は魔女』だとか。今、「魔女…………」、あるいは「…………魔女」の題名は、たぶん『奥様は魔女』に影響されているのでしょうね。
『奥様は魔女』は、1964年9月17日にはじまっています。アメリカの、「ABC放送」で。物語の筋は、たまたま奥様が魔女だったという話。その「奥様」を演じるのが、エリザベス・モンゴリー。その「ダーリン」に扮するのが、ディック・ヨーク。「奥様」のお母さんを演じるのが、アグネス・ムーアヘッド。こちらの「ママ」はいつも魔女。「奥様」は時と場合によって、魔女。
さて、この『奥様は魔女』がはじまってみると、大きな拍手喝采が。それもアメリカはもちろんヨーロッパでも、たいへんな人気番組に。それはひとつには、当時のごく一般的なアメリカ人家庭を覗き見ることができたから。たとえば、「サマンサ」の朝食には、『クエーカー・オート」のオートミールが添えられるとか。ダーリンがいつも白いボタンダウン・カラーのシャツを着ているとか。
『奥様は魔女』を、自分が観ていたから、ことさら大げさに言っているわけではありません。アメリカのテレビには「エミー賞」があります。『奥様は魔女』は、過去二十二回、ノミネートされています。ヨーロッパで人気があったくらいですから、日本での評判もすこぶる上々であったのです。
「奥様の名前はサマンサ、旦那さんの名前はダーリン。ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。ただひとつ普通でないのは、奥様が魔女だということです。」
番組は毎回、この科白からはじまって。いまだにそれを憶えているほどなのです。
テレビが出てくる小説に、『沈める瀧』があります。1955年に、三島由紀夫が発表した長篇。
「同じ少女が、再びテレヴィジョンの飾窓の前に立つて……………」。
この時代のテレビは、各家庭にあるというよりは、電気屋の店先などで眺めたものですが。
『沈める瀧』には、こんな描写も出てきます。
「立ち上つて、Tシャツとズボンを身につけると…………」。
これは、城所 昇の様子。「Tシャツ」が出てくる比較的はやい例かも知れませんね。