アーミンは、毛皮のひとつですよね。ちょっとイタチにも似た小動物。オコジョの名前でも呼ばれるんだとか。
英語では、「アーミン」erm in e 。ことに冬のアーミンが珍重されます。保護色の関係から全身、純白になるから。でも、尻尾の先だけが黒く残るのですが。
中世のヨオロッパでは、王専用のマントとされたものです。アーミンのマントは権威の象徴だったのであります。
よく肖像画などに、白い毛皮のマントを着た王の姿が描かれることが。よく見ると、白地に黒の斑点が飛んでいます。あの黒の斑点は、アーミンの尻尾。黒い斑点の数だけのアーミンが使われているわけですね。高価であるのも、あたりまえでしょうね。
アーミンが出てくる小説に、『虚栄と毛皮』があります。O・ヘンリーが、1900年代のはじめに発表した短篇。
「でも、ロシア産の黒テンて、おそろしく高いんでしょうね。」
これは戀人の、キッド・ブレディから毛皮を贈られた、モーリーの科白。場所は1900年代はじめのニューヨークという設定になっています。
これは黒テンの襟巻き。値段は、250ドル。マフが、170ドル。
そして洒落者の、キッド・フレディがご自慢のスーツが、65ドル。今ならざっと65万円くらいでしょうか。
当時、O・ヘンリーの原稿料、60ドルくらいだったという。ただし、これは一本の小説の、買い切りの価格として。やがてO・ヘンリーの小説が人気になって、一本、100ドルになったという。
ところで、『虚栄と毛皮』のキッドはどんなネクタイなのか。
「紫色のアスコット」。
いいなあ。65ドルのスーツに、紫のアスコット・クラヴァット。でも、なんだか「虚栄とアスコット」と言われそうな感じもあって。