デッキは、甲板のことですよね。
たとえば、デッキ・チェアだとか。あれはもともと船の甲板に並べて置くにふさわしい椅子のことだったのでしょうね。
あるいはまた、デッキ・ゴルフだとか。長い船旅の間での、甲板ゴルフ。もちろん、うんと簡略にしたお遊び用ではあったのでしょうが。
そうそう、デッキ・ブラシ。たぶん、甲板を洗うためのブラシだったものと思われます。
さらには、デッキ・シューズ。言うまでもなく、ヨットなどの甲板上で、滑らないための靴ですよね。
デッキ・シューズのはしりといって良いのかどうか。「トップ・サイダー」。「トップ・サイダー」は、1937年に、登録商標となっています。
1934年頃。アメリカ、コネティカット州の、ヨットマン、ポール・スペリーが考案。「スペリー・トップ・サイダー」と呼ばれるのは、そのためなんだとか。
ポール・スペリーはある日、愛犬と一緒に、ヨットへ。ところが愛犬は、濡れたデッキの上でも、滑ることなく歩いた。
どうして犬は滑らないのか。足の裏をよく見ると、細い筋がたくさん入っていた。そこで、「スペリー・ソール」を創案。ここから今の「トップ・サイダー」が生まれたんだそうですね。
デッキが出てくるミステリに、『緑の目の令嬢』があります。1927年に、モオリス・ルブランが発表した物語。
「また別の連中は、幌つきデッキから外へ出た。」
ただし、ここでの「デッキ」は、列車でのデッキなのですが。
また、『緑の目の令嬢』には、こんな描写も出てきます。
「着ているものの仕立てと色合いは、布地の選択に重きをおく男であることを示していた。」
これは、ラウール・ド・リメジーという紳士が、巴里を歩いている様子。実はこの紳士の正体、アルセーヌ・ルパンなのですが。
ややまわりくどい言い方ですが。自分の身体に合わせての、生地選びがうまい、ということ。もっとはっきり言えば。ちゃんと着痩せする生地を選んでいると、言っているのです。
たしかに、生地選びは大切。ここはフランスですから、「ティスウ」t iss u でしょうか。
自分の身体にふさわしい生地のスーツで。船の甲板を歩いてみたいものですが。