フランスは、国の名前ですよね。パリの街がある国がフランスであります。
「フレンチ」Frenchは、「フランスの」という意味にもなるでしょう。たとえば、「フレンチ・カフ」だとか。英語での「フレンチ」には往々にして「略式」の意味があります。
十九世紀にはフレンチ・カフは略式だったのですね。正式の袖口は、一重で、堅く堅く糊づけしたものだったから。
ところが時代とともに糊が薄くなってくると、一重では保たない。そこで二重に折り返した。これが「フレンチ・カフ」のはじまり。言葉としては、1916年頃から用いられているとのことです。ただし、アメリカ英語。イギリスでは同じものを、「ダブル・カフ」と言います。
フレンチで有名な言葉に、「フレンチ・リーヴ」。もちろん挨拶なしの退席のことです。
でも、フランス人の方でも負けてはいないで。「アン・アングレエ」の言葉を創っています。「英国式」。
借りているアパルトマンなどを、無断で出ることを、「アン・アングレエ」。なんでも十六世紀の頃から使われている言いまわしなんだそうですから、古いですね。
あるいはまた、「フレンチ・クリーム」。これのほんとうの意味は、ブランデー。「フランス人ならコーヒーのクリーム代わりにブランデーを入れるんでしょう」という英国人の想いから生まれた表現なんだとか。
さらには、「フレンチ・フライ」。もちろんフレンチ・ポテトのことです。フレンチ・ポテトにケチャップがなくてと考えるのがアメリカ人。そんな説もありますね。所変われば品変わる。まさに好みは人それぞれなのでしょう。
フランスが出てくるミステリに、『甘い毒』があります。英国の作家、ルーパート・ペニーが、1940年に発表した物語。
「とにかくフランスの雑誌で、きっとお上品なやつなんだろうが、そのチョコレートの広告を見て、彼女はどんなものかと一箱注文してみた。」
これはフランス製のチョコレート・ボンボンについて。
また、『甘い毒』には、こんな描写も出てきます。
「………ゆっくりと投げられた球はひどく不正確なレッグ・ブレークになった。」
これはクリケット競技の様子について。「レッグ・ブレーク」は、野球でいうとこころの、カーヴに似ている球種なんだそうですね。
おしゃれ語にも、「ブレイク」break はあります。トラウザーズの穿き方について。
トラウザーズの裾が靴の甲にかかって、少し崩れるくらい。これが理想のトラウザーズ丈だとされます。そして、その様子を「ブレイク」と呼ぶのです。
どなたか完全なるブレイクの生まれるトラウザーズを仕立てて頂けませんでしょうか。