バッカスは、酒神のことですよね。Bacchus と書いて「バッカス」と訓みます。
古代ロオマ神話では、「バッコス」。ディオニソスの別名なんだそうです。ロオマ神話によれば、ディオニソスは優雅なる美青年だったとのこと。葡萄の木がその象徴だったとも伝えられています。
バッカスが出てくる随筆に、『田園雑感』があります。大正十年に、寺田寅彦が書いた文章。
「凧揚げのあとは酒宴である。それは本当にバッカスの酒宴で、酒は泉と溢れ、肉は林と堆く、その間をパンの群がニンフの群を追い廻すのである。」
当時の九州では、男の子が生まれると、盛大な凧揚げをやったんだそうですね。その凧揚げの後の話を寺田寅彦は書いているわけです。
1969年に、瀬戸内寂聴が書いた随筆『バッカスは惑星にのって』にも、バッカスの様子が描かれています。
これは瀬戸内寂聴がはじめて、稲垣足穂を訪ねる内容になっています。京都、桃山に住んでいた稲垣足穂を。
「目の前のイナガキ・タルホはピカソ描くところのバッカスとそっくりに見えてきた。」
瀬戸内寂聴は朝酒を飲む稲垣足穂を、そのように形容しています。まあ、たしかに稲垣足穂もまた、バッカスに魅入られたおひとりであったでしょう。
バッカスが出てくる短篇に、『ラ・ヴェネツィアーナ』があります。1924年に、ナボコフが発表した物語。
「あるときルーベンスのふっくらしたバッカスの巫女がふるまってくれた酒ですよ。」
ナボコフは「シードル」をそのように描いているのですが。
また、『ラ・ヴェネツィアーナ』には、こんな描写も出てきます。
「手首のまわりを白いバチスト生地のさざ波が取り巻く左手で、黄色い果実を入れた籠を持ち………」
これは「バティスト」baiste のブラウスなのでしょう。
バティストは、フランスの生地屋、ジャン・バティストの名前から、はじまっています。最初は麻織物だったという。今ではコットンでも織られることがあります。
どなたか極薄のバティストのシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。