ジンとジャージー

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ジンは、薬酒ですよね。gⅰn と書いて、「ジン」と訓みます。
ジンはジュニパーベリーから出た言葉です。ジュニパーベリーのエキスを含んだ酒なので。ジンはもともとオランダ生まれの薬酒。
オランダ、「ライデン大学」医学部の、フランシクス・シルヴィウス教授が考案したと考えられています。1660年のこと。
シルヴィウス教授はその新しい薬に、「ジェニーブル」と命名。原料となったジュニパーベリーのフランス語だったので。もっともオランダ語では、「イエネーフェル
」と呼ばれたんだそうですが。
ジェニパーベリーをあえて日本語でいうなら、「西洋ネズ」。古代ギリシアの時代から、ジェニパーベリーの薬効は識られていたんだそうですね。
ジェニパーベリーはその木の実だけでなく、細長い葉や茎、さらにはオイルにも薬効成分を含まれているんだとか。
そのために、古代ギリシアや古代ロオマでは、ワインにジュニパーベリーのエキスを絞って飲むことがあったそうですね。
ただし古代には、蒸留が識られてはいなくて。中世になってからジュニパーベリーの蒸留が行われるように。
オランダのジンがイギリスに伝えられたのは、1680年のこと。オランダのウイリアム三世が、英国のウイリアム三世になったので。ウイリアム三世は当然のようにジンを推奨。これはよってイギリスにジンの流行がはじまったという。
ジンが日本に伝えられたのは、幕末の長崎。オランダ人が自分たちが飲むために運んできたわけです。飲んだ後の空壜は、捨てる。当時のジンは緑色の角壜に入っていて、その時代の日本人の目には貴重品だったそうです。ジンの空壜を趣味として蒐めることがあったらしい。
日本人がジンを飲むようになったのは、明治に入ってから。明治三年、横濱の貿易商「カルノー商会」がはじめてジンを輸入したとの記録があります。

ジンが出てくる小説に、『霧けむる王国』があります。英国の作家、ジェイン・ジェイクマンが、2002年に発表した物語。ただし物語の背景は1920年代に置かれているのですが。

[老女はマフから小瓶をとりだし、それを唇に当て続けた。ジンの匂いが室内に広がった。]

これはウオータルー駅構内のティルームでの様子として。
ここでの「マフ」が十九世紀の「手温め」であるのは、言うまでもないでしょう。
ちょっとした座布団くらいの大きさですから、ジンの小瓶くらい楽に入ります。また、『霧けむる王国』には、こんな描写も出てきます。

「子供たちはベストの衿で喉を隠し、冬用の、脱ぎたくても脱げないほどのぴったりしたジャージーを着ていた。」

英国での「ジャージー」は、スェーターのこと。
もともとは、ジャージー島のフィッシャーマンズ・スェーターだったものです。
どなたか1920年代のフィッシャーマンズ・スェーターを編んで頂けませんでしょうか。

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