トリュッフは、世界三大珍味のひとつですよね。
キャヴィア、フォアグラ、そして、トリュッフ。これで、三大珍味ということになっています。
truff
と書いて、「トリュッフ」と訓みます。香りの高い植物。茸にも似ているもの。チョコレエトにも「トリュッフ」がありますが、ころっとした形がトリュッフに似ているので。トリュッフが入っているわけではありません。
いくらチョコレエトが高価であったとしても、トリュッフには敵わないでしょうね。
あえて日本語で書きますと、「松露」。松の露から生まれたものと、考えたのでしょうか。日本でもヨオロッパでも、トリュッフがどのようにして生まれるのか、よく解ってはいません。当然のように、養殖も不可能です。幸運を願って、ありそうな場所を掘るしか方法がないのです。
だいたい地中十センチくらいのところにトリュッフは眠っています。
トリュッフが出てくる随筆に、『南仏プロヴァンスの25年があります。英国人のピーター・メイルが、2018年に発表した読物。
ピーター・メイルはイギリス人として、もっともたくさんトリュッフを食べた人物ではないでしょうか。1980年代に、プロヴァンスに移住。2018年までプロヴァンスに暮らしたお方。プロヴァンスはトリュッフの産地であり、ピーター・メイルは美食家でしたからね。
そもそも、イギリスにこれほどまでにトリュッフを流行らせたのは、ピーター・メイルではなかったでしょうか。そんなふうにも思えてくるほど、ピーター・メイルは「トリュッフ」の魅力について語っているのです。それにイギリスではトリュッフは採れませんから。
ピーター・メイルは1994年に、日本に。この時、日本語訳者の、池 央耿は、ピーター・メイルに会っているのです。
「紺の上着にフラノのズボン、黒の短靴に真紅のソックスが印象に残っている。」
『南仏プロヴァンスの25年』の「あとがき」に、そのように書いてあります。
「二0一四年には、フランス産にはやや劣るイタリアの白トリュッフ一個ガサザビーズの競売で六万ドルで落札した。」
ピーター・メイルは『南仏プロヴァンスの25年』の中に、そのように書いています。
これは少し説明が必要かも知れません。
フランスでのトリュッフは、基本的に「黒トリュッフ」。一方、イタリアでのトリュッフは、「白トリュッフ」。つまり、イタリアでは白トリュッフが珍重され、フランスでは黒トリュッフが賞味される。各国の美食家の間ではまだトリュッフにおける「黒白」の決着はついておりません。
テーブルに黒が出てきたなら、黒を褒め、白が提供されたなら白に涎を流す。これが国際平和への道でもありましょう。
「この時期、犬を連れて、地べたにしゃがんでトリュッフを探す人の姿を近くの森でよく見かける。みな申し合わせたように散歩がてらの道草を装っている。」
ピーター・メイルは『南仏プロヴァンスの25年』に、このようにも書いてあります。
つまり、プロヴァンスではそれくらいにトリュッフが珍しくはないのでしょう。
『南仏プロヴァンスの25年』には、こんな描写も出てきます。
「つい先日、パナマ帽の波の中に年代物のトリルビー・ハットやターバンを見かけた。」
これはプロヴァンスでの「青物市」でのこと。プロヴァンスでの市場が、年々国際化してきているのでしょう。
「トリルビイ」trilby は、カーヴの美しいソフト帽のこと。
イギリス人は「トリルビイ」と呼ぶことが多い傾向にあります。
1894年に、英国人の作家、ジョージ・デュ・モーリエが発表した小説『トリルビイ』に因んでいます。
1895年には舞台化されて、大ヒット。女主人公の「トリルビイ」があえて男物のソフト帽をかぶったので。
まったく同じものをフランスでは、「フェドーラ」と呼んでいるのですが。
どなたか年代物のトリルビイを作って頂けませんでしょうか。