キャサリンは、お美しいお方ですよね。もちろん、イギリスのキャサリン妃。ケンブリッジ公爵夫人のお名前もあるんだとか。
それはそれとして。もうひとりの、キャサリン。キャサリン・ヘップバーン。往年名女優ですね。キャサリン・ヘップバーンもまた、女王と関係がなくもなくて。『アフリカの女王』に出演しています。共演は、ハンフリー・ボガート。
キャサリン・ヘップバーンは、ローズ・セイヤーの役。ローズ・セイヤーは、イギリス人宣教師という設定。それがふとしたことから、イギリス人船長、チャールズ・オルナットに助けられて……。ハンフリー・ボガートはこのチャールズ役で、アカデミー賞を受けています。
『アフリカの女王』ですから、撮影の大半はアフリカ奥地で。八週間の間。キャサリン・ヘップバーンは割れかかった鏡を木に立ちかけて、あの十九世紀風の衣裳を自分で着たという。
毎朝、髪を洗うのも大変だった。バケツの湯を使って、洗う。そのバケツの湯を用意してくれたのが、タヒリ・ボクンバ。タヒリ・ボクンバは現地人。この映画のために雇われて、キャサリンのアシスタントになった男の子。
アフリカ奥地でのキャサリンの住まいは、質素な小屋。キャサリンがある日、野の花を摘んで、部屋に差しておいた。と、タヒリは次の日から小屋に一輪の花を飾ってくれるようになった。
キャサリンはすべての撮影が終わってアフリカを去る時。タヒリに愛用のバーバリー・コートを与えたとのこと。
「ボギーはおもしろい人物だった。器量の大きな俳優。はったりのない性格。実行の人。演技をたのしむ役者。自分の力量を知っていた。せりふのツボをおさえていた。時間をきちんと守った……」
キャサリン・ヘプバーン著 芝山幹郎訳 『「アフリカの女王」とわたし』には、そんなふうに書いています。「ボギー」が、ハンフリー・ボガートであるのは、言うまでもないでしょう。
『アフリカの女王』は、1951年の映画。1951年に発表されたミステリが、『悪の起源』。エラリー・クイーンの物語。この小説のはじめに。
「革紐 ( ワラチヨー) のサンダルの両足を……」
これはエラリー・クイーンがくつろいでいる場面。「ワラチヨー」は、ワラチ huarache のことでしょうか。
ワラチはメキシコなどの民族的なサンダルですね。
ワラチを履いて。私の想いの中のキャサリンを探しに行くとしましょうか。