ゴンドラはイタリアの小舟のことですよね。もちろん、ヴェネチアの名物でもあります。
ゴンドラと題につくものに、『ゴンドラの唄』が。大正四年の唄なんだそうです。吉井 勇作詞、中山晋平作曲。
🎵いのち短し 恋せよ乙女よ
あかき唇 あせぬ間に
たしか、そんな風にはじまるんでしたね。この『ゴンドラの唄』、なぜか長く、深く、愛された歌で。たとえば、映画『生きる』にも使われています。もちろん、黒澤 明監督。ほとんど最後の場面で、志村 喬が呟くように歌って、ハンカチが必要になったものです。
「いのち短し 恋せよ乙女よ」。この想いも、ずいぶんと古いんだそうですね。ひとつの説として。ロバート・ヘリックにその源があるのでは、とも。
ロバート・ヘリックは、十七世紀の英国で有名だった詩人。今から350年ほど前の文人なんですが。ロバート・ヘリックは、詩人にして、聖職者でもあった人物。その性格は明るくて、愉しい人だったとか。ロバート・ヘリックの詩に、『時を大切に 乙女たちよ』があります。
時の流れは いと速ければ
きょう咲きほこる薔薇も
あすには枯れるものなれば
このロバート・ヘリックは詩が出てくる小説に、『今を生きる』があります。1989年に、N・H・クラウンバウムが発表した物語。もっとも、時代背景は1959年頃におかれているのですが。この物語の中で。
アメリカのプレップ・スクール、「ウエルトン・アカデミー」で国語の先生、ジョン・キーティングがこの詩を朗読する。生徒たちは皆、ブレイザーを着ています。『今を生きる』は映画にもなりましたから、1950年代のブレイザーがたっぷり愉しめるわけです。
「ニール・ペリーが立ち上った。ウエルトン校の制服のブレザーの胸ポケットのあたりには、成績優秀者に与えられる徽章が鈴なりになっていた。」
なるほど。ブレイザーになにかバッヂを添えるのも、いいですね。