洗い髪とアルパカ

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洗い髪という小説があったんだそうですね。明治三十年頃のことですから、正しくは『あらひ髪』なんですが。竹風酔人という人の著作。『あらひ髪』の叙に筆を執ったのが、尾崎紅葉。
明治の時代にヘア・ドライヤーはないわけで、どうしたんでしょうね。その時代には日本髪で、長い。髪を洗うのは良いけれど、乾かすのにたいへんだったでしょうね。
でも、きれいなおねえさんが髪を洗って、自然に乾くのを待っている。その様子も、よろしかったんでしょうね。
洗い髪ならぬ、みだれ髪。洗い髪もいいけど、みだれ髪も………。『みだれ髪』は、もちろん与謝野晶子ですよね。明治三十四年の刊行。

髪五尺ときなば水にやはらかきをとめごころは秘めて放たじ

そんな一節があります。五尺といえば、その時代の女の人の背丈くらいですから、多少の詩的形容が含まれています。ただ、女心を髪に喩えたのは、与謝野晶子の才でありましょう。
与謝野晶子が、オーギュスト・ロダンに会った話。
明治四十五年の五月五日。与謝野晶子はひとり、巴里に向けて出発。シベリア鉄道に乗って。五月十九日に、巴里に着いています。
詳しくは、与謝野晶子著『ロダン翁に逢った日』に出ています。それは大正二年六月十八日のこと。

「銀髪の翁は鼠色のアルパカの上衣に黒いズボンを着け、鼻眼鏡を掛けて………」。

与謝野晶子はもちろん、着物姿。一方のロダンは、当然、洋服。それがアルパカだった。
アルパカは、ヴィキューナとも近縁の動物。
アルパカはグアナコよりも身体が小さく、ヴィキューナよりは少し大きい。そして、アルパカからも極上の繊維が得られるのです。
一度、アルパカの上着、着てみたいものですね。

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