シャーベットは、美味しいものですよね。ひんやりとして、あまくて、オレンジの薫りがあったりして。
シャーベットについて論陣を張った人に、サイデンステッカーがいます。エドワード・G・サイデンステッカーは、アメリカ生まれの、日本文化研究家。
アメリカ人であるサイデンステッカーが、アメリカのレストランで、食事。食事の後に、「シャーベットを………」。と、シャーベットはございません、という。「ソルベならございが………」と。つまり、サイデンステッカーが入ったレストランの解釈では、シャーベットとソルベは別物であると。そこで、サイデンステッカーはそのレストランを出る時。
「今度は、アメリカのシャーベットが食べたいものだね………」と、せめてものイヤミを言ったそうですが。私自身の経験でも。
とある洋菓子喫茶店で。「プリンをください」と、注文。と、給仕の方はおっしゃった。
「お客さま。プリンでございますか、それともプディングでございますか?」うーん、これですから言葉は、難しい。
シャーベットがお好きだった人に、丸谷才一がいます。丸山才一は、『木星とシャーベット』という随筆集を書いているくらいですから。
「わたしはシャーベットが好きで、デザートのときもこれを頼むことが多い。それで、木星くらゐの大きさのシャーベットを思はず心に描いて、嬉しくなったものらしい。」
そんな風に書いています。ある時、科学雑誌を眺めていたら。「木星はシャーベットだった」と、見出しに出ていて、木星の大きさのシャーベットを想ったのでしょうね。
丸谷才一が随筆の名手であるのは、いうまでもありません。もし往年の編集者が、名随筆家十人を選ぶなら。絶対に、必ず、たぶん、丸谷才一を選ぶでありましょう。その丸谷才一に、『シャーロック・ホームズの家系』と題する随筆があります。文字通り、シャーロック・ホームズの家系について、念入りに語っています。さすがに名随筆家だけに、読ませる内容になっているのですが。
「シャーロック・ホームズ」は、実はファッション用語のひとつでもあります。世界のどこの都市であっても。帽子屋の店先で、「シャーロック・ホームズ!」といえば、ディアストーかが出てくるしかけになっています。
ディアストーカーの前身は、「フォア・アンド・アフト」で、一種のヘルメットだったと思われます。狩猟用帽子ですから、流れ弾くらいなら平気なように、薄い鉄板が入っていて。
そんな昔のことを考えるなら、完全に半球型の、「シャーロック・ホームズ」こそが伝統的な形かと思うのですが。
いつかきっと、シャーロック・ホームズをかぶって、シャーベットを食べに行きたいものですね。