ジャムは、美味しいものですね。たいていは、パンに添えたりして。
パンにはバターをぬって。さらにその上に、ジャムを重ねる。これはもう二重三重の歓びでありましょう。
ジャムの種類にもいろいろとありまして。とりあえず果物に砂糖を加えて、とろりとろり弱火で煮詰めますと、ジャムになるわけですから。
杏ジャムがあって、イチゴジャムがあって、ブルーベリージャムがあって。これはもう好みの問題でありましょう。
ジャムがお好きだったらしいお方に、夏目漱石がいます。『吾輩は猫である』にも、繰り返し「ジャム」の話が出てきます。ここから想像するに、漱石はジャムをそのままに、召し上がった。もちろん、パンにジャムを塗ることもあったでしょう。が、ジャムを単独で、食べた。
では、夏目漱石はどこでジャムの味を覚えたのか。たぶん倫敦留学中のことかと思われます。
倫敦では濃い紅茶を飲む。この濃い紅茶に添えて、ジャムを頂くこともあったでしょう。そして漱石はそのジャムの味が忘れられなかった、のでは。
そもそも今のジャムらしきものは、1500年頃にはじまっているらしい。それは、アップル・ジャムであったと。
ジャムが出てくる小説に、『ダブリナーズ』があります。『ダブリナーズ」は、1914年に、ジェイムズ・ジョイスが発表した物語。
「あるいはジャムの掛かったブラマンジェを補充する。」
これは食事中の、メアリー・ジェインの様子。また『ダブリナーズ』の中には、こんな描写も出てきます。
「当時ジェリーハットといっていた山高帽をかぶっていた。」
「山高帽」は、ボウラー・ハットのことで。十九世紀はじめのアイルランドでは、「ジェリー・ハット」の愛称があったものと思われます。
そういえば、かぶっているボウラーを思わず脱ぎたくなるようなジャムに出会いたいものですね。