濃紺とノイル

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濃紺は、よく使われる色ですよね。紺は紺なんですが、もっと深みがあるので、濃紺。濃紺の服は一着も持っていません、そんな人は珍しいかも知れませんね。
むかしの紺はたいてい藍で染めたものです。そのためにいろんな諺も生まれています。
「青は藍より出て藍より青し」、だとか。同じことを、「出藍の誉れ」とも言います。
藍の染料は、土を溶いた色に似ています。この土色の染料に白布を漬けると、当然土色になります。が、それを引き上げると、あーら、不思議、紺色に。これは酸化作用によるものです。
紺は紺でも、うんと淡い青のことを、「甕のぞき」。むかしの藍はたいてい大きな甕に入っていて。その甕の中を少しのぞいたくらいの色。それで「甕のぞき」の呼び名が生まれたんだそうですね。
甕のぞきよりはもっと青に近い色を、浅葱色。今風に申しますと、ライト・ブルーでしょうか。参勤交代の地方の侍が、着物裏に、よく浅葱色を使って。そのために江戸時代には、「浅葱色」は地方侍を指し たんだとか。
一方、濃紺が出てくる小説に、『 鼠坂』があります。森 鷗外が、明治四十五年に発表した短篇。

「濃紺のジャケツの下にはでなチョッキを着た、色白い新聞記者である。」

ということは明治期にも「濃紺」はすでに用いられていたのでしょうね。
濃紺が出てくるミステリに、『ファクト・オブ・デス』があります。

「濃紺のズボンに白いスポーツ・ジャケット、航海用の帽子…………」。

これは、ロマノフという人物の姿。また、『ファクト・オブ・デス』には、こんな描写も。

「ボンドは洒落たナッソー・シルク・ノイルのタン色のズボン、白いメッシュのクルーネックのニットシャツ……………」。

『ファクト・オブ・デス』は、レイモンド・ベンスンが1998年に発表した「ボンド物」なんですね。
「ノイル」noil は絹の「落糸」のこと。その「落糸」をあえて織り込んで野趣をあらわした生地のこと。かなりの通人が好む生地でもあります。

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