ストーリーは、物語のことですよね。それがどんな物語であっても、愉しい。ハラハラドキドキする。それが「創作」であると分かっていても、大いに愉しめます。
ストーリー story とヒストリー history は、なにか関係があるのでしょうか。history をこじつけて、his story と解せないでもありません。さらにさらに「his」を「神」とするなら歴史は「神の物語」ということにもなるのですが。
たとえば、ギリシア神話。ギリシア神話もまた、「神の物語」のひとつでありましょう。西洋にギリシア神話があれば、日本には『古事記』があります。『古事記』はもともと伝承文学だったようですね。たとえば稗田阿礼がストーリーを語る。その語りを後の人が記録したのでしょう。その創作力、記憶力には驚く他ありませんね。
物語を創ることのお上手なお方のことを、「ストーリー・テラー」と呼ぶことがあります。ここでもやはり「テラー」なんですね。
スパイ小説でのストーリー・テラーのひとりに、エリック・アンブラーがいます。エリック・クリフォード・アンブラー。1909年6月28日、ロンドンに生まれています。生家は人形屋。操り人形人形を観せる店。パペットですね。エリックも若い頃は操り人形師として手伝っていたんだそうです。
後にストーリー・テラーになるには、操り人形師が役立つのかも知れませんが。そんなことが言いたくなってくるほどに、エリック・アンブラーのストーリーは冴えに冴えています。ひとつの例を挙げるなら、『ディミトリオスの棺』。1939年の発表。名作にして、古典であります。
エリック・アンブラーが1967年に書いたのが、『ダーティー・ストーリー』。これもまた、引き込まれてしまいます。『ダーティー・ストーリー』の中に。
「金髪男はブルーのスポーツシャツを着て、陽焼けのした前腕に金色のうぶ毛の光っているのが…………………」。
これは主人公の、アーサー・アブデル・シンプソンが、ふと見かけた男の様子。
「ブルーのスポーツシャツ」は、コットンでしょうか、シルクでしょうか。絹の、ブルーの、スポーツ・シャツで、ストーリーのある本を探しに行きたいものですね。