モオリスで、フランスの俳優といえば、モオリス・シュヴァリエでしょうね。モオリス・シュヴァリエは、本名。1888年9月12日に、巴里に生まれています。
モオリス・シュヴァリエは根っからの芸人で、初舞台は十歳の時だったと伝えられています。1907年には、歌手にも。『美少年』を歌って、評判。ここから歌える芸人としての活躍がはじまるわけですね。
モオリス・シュヴァリエが流行らせたものに、カノティエがあります。シュヴァリエはいつも舞台の上で「衣裳」としてカノティエをかぶった。ここから巴里でボーターが流行するようになったのですね。
シュヴァリエは当時のフランスの芸人としては珍しく英語、ドイツ語を操ることができたお方。これは第一次世界大戦と関係があります。
1914年のこと、モオリス・シュヴァリエは捕虜となって。捕虜をとらえたのはドイツ軍で、中にはイギリス兵もいた。この時、耳の良いシュヴァリエは英語、ドイツ語を覚えたんだそうです。
1957年の映画、『昼下がりの情事』ではヘップバーンのお父さん役を演じています。パリが舞台で、シュヴァリエはフランス人なのに英語をしゃべっているのは、そういうわけなのですね。
フランスで、モオリスでということなら、もうひとり、モオリス・ルブランを想い浮かべることでしょう。もちろん、「アルセーヌ・ルパン」の生みの親であります。
「アルセーヌ・ルパン」はあまりにも有名になったので、「新作」のルパン物も少なくありません。たとえば、ジャン=ポール・サロメとローラン・ヴァジョーの共著による『ルパン』もそのひとつでしょう。この中に。
「ルパンは薄紫のモーニングコートを着こみ、頭にはシルクハット、手にはステッキ…………。」
十九世紀末の話ですから、ルパンはモーニング・コートを着ているわけです。「薄紫」の。私は勝手に、「モーヴ」m a u v e かと。明るい紫のことをフランスでは、「モーヴ」と呼ぶことがあります。
いいなあ。モーヴのモーニング・コートを着てみたいものですね。