すかんぽは、イタドリのことなんだそうですね。時には、「スイバ」とも呼ばれるんだとか。野草といえば野草なんでしょうが、食用にも。食べるとかすかにすっぱい。それで「酸模」の字が宛てられるのでしょう。
すかんぽを食べる時、茎を折ると。「ポコッ」と音が。それで、「すかんぽ」なのかも知れませんが。
♬ 土手の酸模 ジャワ更紗………………。
これは、北原白秋の童謡。昭和二年頃の作詞なんだそうです。土手に咲くすかんぽが、ジャワ更紗に見えるというのでしょう。秀逸の一語に尽きます。
『酸模』という題の小説を書いたのが、若き日の三島由紀夫。
「秋彦の家の傍にはなだらかな丘が浮かんででも居る様に聳えて居た。」
そんな風にはじまっています。三島由紀夫の『酸模』の扉には、北原白秋の『ほのかなるもの』の詩の一節が掲げられています。
三島由紀夫が『酸模』を書いたのは、昭和十三年の一月だと、考えられています。当時の、学習院の校誌に発表されています。平岡公威、十三歳の時。お母さんの、倭文重は公威の『酸模』を読んで、「この子は作家以外には………………。」と思ったそうです。それは、そうでしょうね。
三島由紀夫の代表作に、『天人五衰』があります。この中に。
「僕は寒さを我慢して、衿のあいたシャツにVネックのスウェータアを着、靴の紐をほどけやすいやうにしておいた。靴紐を結びたびに、ネックレスは首から辷り出て、メダルをきらめかせることになるからだ。」
まあ、少年というものは、なにかと工夫するものですねえ。
なにかお気に入りのVネック・スェーターで、すかんぽを探しに行くといたしましょうか。