サイドカーとサックス・ブルー

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サイドカーは、カクテルの名前ですね。ブランデーに、ホワイト・キュラソー、そしてレモン・ジュースを加えた飲物。
カクテルの「サイドカー」は、第一次大戦中の巴里で生まれたとの説があります。巴里駐留のイギリス軍将校が、いつも決まった時間にバアにやって来て、ブランデーのカクテルを注文した。その将校、常にサイドカーを乗りつけたので、「サイドカー」に。
要するに、第一次大戦中には、サイドカーが流行だったのでしょう。
高見 順が昭和二十五年に書いた『仙人掌』にも、「サイドカア付きオートバイ…………………。」と出てきます。
高見 順は、昭和三十三年に、巴里を旅しています。その時の様子は、『パリ日記』に収められています。五月二十一日の夜、巴里着。

「車のOr ang e 系統が流行。ブリジッドがのり廻したので。
モードにも、口紅にも入ってきた。」

五月二十二日の『日記』には、そのように書いています。口紅のオランジュは、ブリジッド・バルドオの愛車の色からきているのでしょうか。同じ日の『日記』に。

「アブサンをのむ。」

ともあります。その時代にはまだ「アブサン」を飲ませるところがあったものと思われます。

「二階の麻口の持物を沢山、サイド・カアのせていった。」

細田民樹著『真理の春』の一節に、そのように書かれています。『真理の春』は、昭和五年の執筆。同じ『真理の春』に、こんな描写が出てきます。

「頼子はサックス色のサンマ・コートを、母親を煽り倒すほど、やけにひっかけると……………………。」

ここでの「サックス色」は、たぶんサックス・ブルーのことなんでしょう。もちろん、ライト・ブルーのこと。
もともとは、「サクソニー・ブルー」。ドイツ、サクソニー地方に由来する色名。
サックス・ブルーの上着を羽織って。バアにサイドカーを飲みに行きたいものですね。

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