チョコレエトと千鳥格子

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チョコレエトは、美味しいものですね。チョコレエトにはなにか栄養になるものも含まれていて。長生きするのにもってこい。そんなふうに考えるお方もいるんだそうですが。
チョコレエトがお好きだったのが、森 茉莉。

「洋酒と煙草は気分だけを飲んでいるので、おかしいほど少量で、いくらでもたべられるのはチョコレエトだけである。」

森 茉莉著『貧乏サヴァラン』には、そのように書いています。因みに「チョコレエト」は森 茉莉の原文通りです。
余談ですが、この「三つの嗜好品」という章には、葉巻の話も。森 茉莉のお父さん、森 鷗外が葉巻に火を点けるとき、いかに優雅で、上品であったかを、娘の目から、懇切丁寧に、延々と、書いています。その視線はまるで戀人を観るかのようです。
「三つの嗜好品」が洋酒、煙草、チョコレエトを指しているのは、いうまでもないでしょう。森 茉莉は、「ボルドオの紅」を飲むと、いくらでも小説が書ける気分になるとも、書いています。
チョコレエトもこれに似ていて、軽い興奮剤でもあるでしょう。この広い世の中には、極上のチョコレエトを食べると、極上の詩が生まれる。そんな人もいるのかも知れませんね。
チョコレエトが出てくる小説に、『船出の時、帰航の時』があります。1930年代に、アーウィン・ショオが書いた短篇。

「化粧台には封を切ったクリネックスの箱やまつ毛のカーラーや半分食べかけのチョコレートがあったので………………………」。

訳は、常盤新平。戦後間もなく、常盤新平は。「クリネックス」が辞書に出ていないので、翻訳に困ったと書いています。
1930年はアメリカも戦争中で、たぶんチョコレエトも貴重品だったのではないでしょうか。
同じく1930年代に、アーウィン・ショオが書いた物語に、『ベルリンは闇のなかに』が。この中に。

「 「英仏連合軍は」 と千鳥格子の上着の男が言っていた。」

もちろん、戦況の話なんですね。
千鳥格子は英語で、「ハウンズ・トゥース・チェック」。猟犬の牙みたいな柄というわけですね。
一方、「千鳥縫い」は、「クロス・ステッチ」とも。
千鳥格子のジャケットで、美味しいチョコレエト。たまりませんね。

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