トニイとトレンチ・コート

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トニイは、T ony でしょうね。男の人に多い名前。トニイ・カーティスだとか、トニイ・ベネットだとか。
日本人の愛称にもトニイはあって。赤木圭一郎。少し前の日活の俳優。昭和三十五年の映画『抜き射ちの竜』は、代表作でしょう。
赤木圭一郎もまた、当時は稀少品だった「ジーパン」を穿いていたひとり。それは「ラングラー」のジーパンで。映画のなかでの「ラングラー」としては、赤木圭一郎のそれが比較的はやい例でしょう。赤木圭一郎の「ジーパン」を観たさに、映画館に足を運んだものです。
赤木圭一郎が好きだった映画が、『灰とダイヤモンド』。1958年のポーランド映画。これには原作があって、同名の小説の映画化なんですね。1948年に、イェージイ・アンジェイェフスキが発表した長篇。1945年のポーランドの混乱を描いた物語。
この中で、主人公マチェクを演じるのが、ズビグニエフ・チブルスキ。いつもウエリントン型のサングラスをかけていて。1950年代にウエリントン型サングラスを流行らせたのは、『灰とダイヤモンド』ではなかったか、と思われてくるほどです。それくらいに印象的なサングラスでありましたね。
そうそう、トニイの話でしたね。トニイが出てくるミステリに、『眠れる美女』が。1973年に、ロス・マクドナルドが発表した物語。

「トニイ・ラッシュマンが家から現れて、浜を斜めに横切ってきた。」

トニイ・ラッシュマンは、シルヴィアの秘書という設定になっているのですが。また、『眠れる美女』には、こんな描写も出てきます。

「私がジョイスの門を入ろうとした時、スパイのようにトレンチ・コートを着て帽子の縁を目深に引き下げた若いやせた男が出てきた。」

ここに「私」とあるのは、私立探偵の、リュウ・アーチャー。リュウ・アーチャーから眺めてのトレンチ・コート。それは「スパイのよう」だったのでしょう。
「スパイのように」トレンチ・コートを着て。赤木圭一郎の映画を探しに行くとしましょうか。

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