シフォンとシルヴァー

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シフォンは、絹織物の名前ですよね。蝉の羽根よりもっと薄く、悩ましい絹地。
もちろん ch if on と書いて、「シフォン」と訓みます。「シフォン」のフランス語は、1608年頃から使われているそうですから、古いですね。
シフォンは、古代フランス語の、「シイプ」 ch ip e から出ているとの説があります。この「シイプ」には「ボロ」の意味があったという。してみれば、言葉も変われば変わるものですね。
シフォンが出てくる小説に、『銀座二十四帖』があります。昭和三十年に、井上友一郎が発表した物語。

「しかし、今夜、黒いシホン・ベルベットのコートを羽織り、うすみどりのモヘアのショールに、半ば顔を隠すように立ちあらわれた彼女の姿は………………」。

これは「和歌子」という女性の着こなし。井上友一郎は、「シホン」と書いたいます。たぶん、シフォン・ヴェルヴェットのことかと思われます。
井上友一郎が、昭和二十八年に書いた短篇に、『湘南電車』が。この中に。

「すぐさま茶色のホームスパンのズボンの膝に、小さな菓子包みをひらいてくれた。」

これは洋画家の、木原という紳士の穿いているズボン。
井上友一郎は凝り性の作家で。書くものはすべて実際に触ったという。もしかすれば、当時は貴重品だったホームスパンも、自分で試してみたのでしょう。

「白いシフォンのドレスに身を包み、ブロンドの髪をなびかせながら二人のほうに近づいてくる。」

ウォーレン・アドラーが、1978年に発表した『サンチアゴから来たスパイ』の一節。これは、アンナという美女の様子。
また、『サンチアゴから来たスパイ』には、こんな描写も。

「したてのいいグレーのスーツを上品に着こなし、銀色の水玉模様のネクタイを締めている。」

エドワルドという人物も装いなんですが。おそらくは、シルヴァー・グレイのドットではないでしょうか。もし、ピン・ドットのシルヴァー・グレイのタイなら、シフォンのドレスの姫にも、お近づきになれるでしょう。

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