アリバイとアズール

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アリバイは、「不在証明」のことですよね。その時、そこには居なかった、ということ。
ミステリにも「アリバイ」はよく出てきます。

「先づ嫌疑はフリイドリッヒにかかる。が、彼のアリバイが認められ、事件はそのまま迷宮に入らうとする。」

堀 辰雄の短篇『晩夏』の一節に、そのように出てきます。堀 辰雄が、昭和十五年の
「婦人公論」九月号に発表した小説に。
これは主人公がドイツの小説を読んでいる場面。題名は、『猶太びとの橅』と紹介されているのですが。
「アリバイ」が出てくる小説としては、わりあい早い例かも知れませんね。
アリバイ al ib i は、1727年頃から用いられている英語なんだとか。もとはラテン語の
「アリビ」 a l iblī で、「どこか他の所」の意味だったそうですね。
時計の中には、時報付きのものもあります。が、たまたまほんとうの時間とは別の時報が鳴ることも。そんな時の表現に、「アリバイ・クロック」というのがあるんだそうです。
まあ、日常会話での「アリバイ」は、多く「言い訳」の意味で用いられるようですが。
アメリカのミステリ作家、パトリシア・マガーが、1978年に発表した物語に、『完璧なアリバイ』が。でも、実際には「完璧」ではなかったのでありますが。それはそうでありましょうが。
純文学にも、『アリバイ』はあります。1959年に、英國の、ダフネ・デュ・モーリアが発表した短篇。この中に。

「彼はやにわに画筆をえらび、テレビン油にひたしてから、アズール・ブルーをべったりつけ、それを鉛白と混ぜ、混ぜ合わせたものをカンバスになすりつけた。」

「アズール・ブルー」。これは「ジョニー」が着ているスェーターの色でもあるのですが。
アズール az ur e は、空色、群青色。
アラビア語の「ラズーラ」 l az ur a から出た言葉。それはラピスラズリの意味であったとのこと。
中世、フランスの盾の色は「アズール」だったという。それは「忠実と真実」の象徴の色であったそうですね。
どこにいても目立つほどの、「アズール」のスェーターをどなたか編んで頂けませんでしょうか。

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