カレーは、よく食べますよね。ことに、ひと口カレーなら、いつでも、食べることができるでしょう。
カレーを作るのがお好きだったのが、坂東三津五郎。坂東三津五郎は歴代の名優。何人もいます。ここでの坂東三津五郎は、八代目坂東三津五郎。
「だからそれからは折あるごとにカレー等、もっぱら洋食を作った。」
坂東三津五郎著『聞きかじり 身かじり 読みかじり』の一節です。
大正十年頃。坂東三津五郎が、十五歳くらいの時の話。このカレーを誰に食べさせたのか。踊りの、武原はん。武原はんは、踊りの名人と謳われた七代目坂東三津五郎のところに、稽古に来ていたので。
八代目坂東三津五郎が、もっと子どものとき。銀座四丁目に、「吉川」というおもちゃ屋があって。飾り窓に、小型の機関車が。これが、本物そっくりに動く。三津五郎、このおもちゃの機関車の前で、動かなくなった。
店の主に聞くと。「皇太子さまのご注文で………………」
でも、どの子どもも機関車前で、座りこむ。英國製の高価なおもちゃ。
「もう、奥に仕舞います」。そう言ったという。昭和天皇が皇太子であらせられた頃の話。
また、坂東三津五郎の『聞きかじり 見かじり 読みかじり』には、こんな話も。
「父が、「型って心さ」と答えた。」
ある時、ある人が、七代目坂東三津五郎に、訊いた。
「歌舞伎の「型」とは何ですか?」
これに対する名優の返事。
「型って心さ」
服の型も、まったく同じだと思います。