バンガロオは、簡易住宅のひとつなんでしょうか。むかし、よく別荘地にあったような記憶があります。
バンガロオ b ung al ow は、イギリスから日本に伝えられた言葉のようですね。イギリスでは十八世紀から使われている古い言葉なんだとか。
インド、ヒンディ語の「バングラ」から出ているという。「バングラ」は、「ベンガル風の」という意味があったらしい。その時代のベンガルでの家の建て方に倣ったものかも知れませんね。
バンガロオは、英國の植民地時代と関係しているのでしょう。夏目も『彼岸過迄』の中で、「バンガロー」を使っていますから、明治期にもバンガロオはあったのでしょう。
バンガロオが出てくる小説に、『美しい村』があります。昭和八年に、堀 辰雄が発表した短篇。
「その大抵が三、四十年前に建てられたと言われる古いバンガロオが雑木林の間に立ち並んでいたが…………………。」
堀 辰雄は、『美しい村』の中で、「バンガロオ」と書いています。この物語の背景は、輕井澤。堀 辰雄はよく輕井澤を散歩したそうです。いつも黒いベレエをかぶって。
『美しい村』は、『風立ちぬ』の前篇ともいえる小説です。
岩波文庫の『風立ちぬ』に解説の筆を採った河上徹太郎は、こんなふうにも書いています。
「戦争末期の予備学生の九部九厘までが堀 辰雄の愛読者だったと 聞いたが……………………。」
九分九厘ということは、99パーセントで、少なくとも堀 辰雄は、よく読まれたのでしょう。
また、『美しい村』には、こんな描写も出てきます。
「そこの突きあたりにヴェランダがあり、籐の寝椅子に一人の淡青色のハアフ・コオトを着て………………。」
これは、ある少女とはじめと会う場面。
堀 辰雄は、「ハアフ・コオト」と書いているのですが。
いつかハアフ・コオトを着て。軽井沢を歩いてみたいものですね。