カトリックとカウズ

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カトリックは、キリスト教の宗派のことですよね。
「ローマン・カトリック」。同じキリスト教でも、「プロテスタント」もあります。アメリカには「プロテスタント」が少なくありません。
では、イギリスではどうなのか。「英国国教教会」。これは十六世紀、ヘンリー八世の時代遡るんだそうですね。
ヘンリー八世が結婚と離婚を繰り返すので。時のローマ教皇クレメンス七世が咎めた。これがもとで、ヘンリー八世はカトリックから離れて、「英国国教教会」をつくることになったんだとか。
日本の作家で、カトリック教信者といえば、遠藤周作でしょうか。
遠藤周作は、昭和八年に、「夙川教会」で洗礼を受けています。洗礼名は、「ポール」だったという。遠藤周作が十歳のときに。

「イエスは同時代のすべての人間の誤解にとりかこまれて生きねばならなかった。短い生涯の間、民衆も敵対者も、弟子たちさえも彼をまったく理解していなかった。」

遠藤周作著『イエス・キリスト』に、そのように書いています。
遠藤周作は『海と毒薬』をはじめとして、数多くのカトリックについての小説を書いているのは、言うまでもないでしょう。
遠藤周作は若い頃から、カトリック教に迷いに迷い、悩みに悩んだ末の、敬虔な信者でありました。
でも、遠藤周作にはもうひとつの顔があって。「孤狸庵」。ユウモア作家。面白い話をたくさん書いています。
ある時、遠藤周作は友人の神父を誘って、鹿児島の知人宅へ。その知人宅では、焼酎が出た。その頃、遠藤も神父も、焼酎は割って飲むものとは知らずに。「生」で酒のように。
遠藤も神父も酔って酔って。知人がモオツアルトのレコードをかけると。神父は。
「いやあ、やっぱり美空ひばりはいいねえ」。
そう言って、寝込んでしまった。
遠藤周作の随筆『酒』には、そのように出ています。

「そのころすでにぼくは、瀟洒なダブルを着ていたんだ。」

昭和四十九年に、親友の北 杜夫との対談で、そのように発言しています。
北 杜夫が、「着ているスェーターが短くなって、布を継ぎ足した」という語りに対して。
北 杜夫だけでなく、吉行淳之介、阿川弘之などとも親交があって。平気で本人の前で、
「お前はバカだ!」を連発する仲でもあったという。
えーと、カトリックの話でしたっけ。
カトリックが出てくる小説に、『五彩のヴェール』があります。サマセット・モオムが、
1925年に発表した長篇。

「あなたはカトリック信者ですの?」

キティが、ウォディングトンに訊ねる場面。これに対するウォディングトンの答え。

「説明するときには英國國教會徒だつて言いますがね、それは大して何も信じてないつてことを穏やかの言つたつもりなんです……………。」

モオムの『五彩のヴェール』の中に。

「晩餐會は樂しかつた。ロンドンの芝居のこと、アスコットやカウズのこと、彼女が知つているいろいろなことで話がはずんだ。」

「彼女」とは、主人公の、「キティ」のことなのですが。
「カウズ」 C ow es は地名。ワイト島の港町。夏の避暑地であり、ヨットやボート競技が多く行われる所でも。
また、ディナー・ジャケットを指す古い言葉でも。
その昔、英國皇太子は、毎年の夏、カウズに王室専用ヨットを停泊させる習慣がありました。このヨットの中での晩餐に、燕尾服を略した上着を。それが後に「ドレス・ラウンジ」と呼ばれたもの。
ディナー・ジャケットの名称は、十九世紀末のことです。そもそもは、「カウズ」と。
その英國皇太子とは、後のエドワード七世だったのですね。
どなたか1870年代の、「カウズ」を復活させて頂けませんでしょうか。

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