トゥイードとトゥルーズ

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トゥイードは、スコッチのことですよね。スコッチ・トゥイードなので、短いして、
「スコッチ」。
スコッチにはもうひとつの意味があって、ウイスキイ。スコットランドのウイスキイなのでで、「スコッチ」。
でも、言葉の順番から申しますと、トゥイードのほうがはやい。ウイスキイはトゥイードよりも後で一般化したものでしょう。

「………暖かさうなスコッチの裾長の服に、露西亞帽を眉際まで被つた夫人の前に立つと……………。」

大正八年に、有島武郎が発表した『或る女』の一節。これは「田川夫人」の装い。ウイスキイの服ではなく、トゥイード地のドレスなんですね。

「五色ばかりの粗いスコッチの絲の束と一緒に……………。」

大正二年に、鈴木三重吉が発表した『桑の實』にも、そのように出ています。もちろん
ウイスキイではありません。
ではトゥイードの言い方はなかったのか。いえいえ、そんなことはありません。

「鈴木君は頭を美麗に分けて、英國仕立のトヰードを着て、派手な襟飾りをして……………。」

夏目漱石の『吾輩は猫である』には、そのように出ています。
漱石は、「トヰード」と書いていますが、今のトゥイードのことでしょう。
『吾輩は猫である』は、明治三十八年の発表で。「トゥイード」の例としては、わりあい早いものかと思われます。
トゥイードが出てくる小説に、『大尉の人形』があります。
『大尉の人形』は、イギリスのD・H・ロレンスが、1921年に完成させた短篇。

「だが幸いなことに、彼の帽子は普通のツィード帽だった。」

これは、「アレキサンダー・ヘバン」という人物について。
『大尉の人形』には、もちろん人形が出てきます。

「その人形はとても可愛いとは言えなかった。ぴったりしたタータン織のズボンをはいたスコットランドの兵隊人形だったからだ。」

それで、『大尉の人形』の題になっているわけですね。
これはおそらく、「トゥルーズ」 tr e ws のことかと思われます。もともとは、
「トラウザーズ」から変形したもので。スコットランド高地人が穿く、極端に細くトラウザーズのことです。
英語としては、1568年頃から用いられているとのこと。
どなたかトゥルーズを仕立てて頂けませんでしょうか。

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