ブイヨンは、スープのひとつですよね。
肉の塊を紐で縛って。アクを掬いながら、コトコト、トロトロ煮込みますと、澄んだ肉汁が。これが、ブイヨンであります。
b o u ill on と書いて、「ブイヨン」と訓むんだそうです。
十九世紀の巴里には、「ブイヨン」という名前のレストランがあったという。ブイヨンを中心に提供する店だったので、「ブイヨン」。
フランスでいうブイヨンは、イギリスでいうところの、「ビーフ・ティー」にも似ているでしょうか。英国での「ビーフ・ティー」はやや信仰に近いものがあって。ビーフ・ティーは健康によろしい、万能薬かわりでもあります。
ブイヨンはあらゆる料理の基本でもありまして。ブイヨンさえあれば、いろんな料理への応用が可能というものでもあります。
ブイヨンが出てくる小説に、『賜物』が。『賜物』は、1937年に、ナボコフが書いた長篇。もちろん、ウラジミール・ナボコフ。舞台背景はロシアになっています。
「…………イヴォンナ・イワーノヴナがクルトン入りのブイヨンをカップに入れて持ってきてくれたからだ。」
ナボコフの『賜物』は、自伝的小説だと考えられています。ナボコフもたぶんブイヨンがお好きだったのでしょう。
また『賜物』には、こんな描写も出てきます。
「………………緑褐色フェルトのコートを身にまとっている。」
これは町で出会ったある老人の様子。
1930年代のロシアでは、フェルトのコートを着ることがあったのでしょうか。
フェルト f elt は、理想の生地という印象があります。自由に、あらゆる形に仕上げられるからです。織物でもなく、編物でもなく、繊維の圧縮地。切っても端がほつれることもありませんし。
フェルトはソフト・ハットに不可欠の素材でもあります。
どなたかフェルトのコートを仕立てて頂けませんでしょうか。