ガストンで、ミステリ作家でといえば、ガストン・ルルーですよね。
ガストン・ルルーは名作『黄色い部屋の秘密』で、広く知られています。
『黄色い部屋の秘密』は、1907年に発表されて、拍手喝采となった読物であります。
意表を突いた内容もさることながら、「絵入り」だったことも忘れてはならないでしょう。
『黄色い部屋の秘密』は、当時に絵入り新聞『イリュストラシオン』に連載された小説だったのですから。
これは1891年の「シャーロック・ホームズ物」と似ているのかも知れません。
コナン・ドイルのホームズ物が連載されたのは『ザ・ストランド・マガジン』で。
『ザ・ストランド・マガジン』では、当時としては画期的な挿絵を大胆に入れたものであります。
『ザ・ストランド・マガジン』での大成功の影響を、『イリュストラシオン』が受けている可能性はあるでしょうね。
ホームズといえば、ルパンでしょうか。モオリス・ルブランが、『アルセーヌ・ルパンの逮捕』を書いたのが、1905年のこと。
『黄色い部屋の秘密』に先立つ二年前ということになります。それまでのガストン・ルルーは新聞記者だったのですが。
これは想像ですが。ルルーがルブランの成功をどこかで意識していたのではないでしょうか。
ガストン・ルルーは1910年にもヒットを打っています。『オペラ座の怪人』がそれです。『オペラ座の怪人』は、何度も映画化もされているのは、ご存じの通りでしょう。
1909年頃、ガストン・ルルーは偶然、オペラ座に行くことがあって。そこで、観客が他愛ない噂話を。
「なんでもオペラ座には、幽霊が出るそうだよ」。
これを聞いたルルーが、小説に仕上げたのが、『オペラ座の怪人』だったと、伝えられています。
ガストン・ルルーが1909年に発表したのが、『黒衣婦人の香り』です。
1909年の『黒衣婦人の香り』なのか、1907年の『黄色い部屋の秘密』なのか。甲乙つけがたいところではありますが。私としては僅差で、『黒衣婦人の香り』のほうが好みに合っています。
『黒衣婦人の香り』の中に。
「………簡素で非の打ちどころのない好みの衣裳 ( 黒のフロックコート、黒のチョッキ、黒のズボン、白い髪、ばら色の頬 )……………。」
そんなふうに書いています。これは「ボブ老人」の着こなしについて。またボブ老人の着こなしを、「老女のようにおしゃれである」とも形容しています。
また、『黒衣婦人の香り』には、ステッキの話も出てくるのですが。
「………その握りは象牙製で、ディエップの有名な職人の手で、見事な細工がしてあった。」
これは、「アーサー・ランス」の持物。
その「職人」の名前は、「ランベース」。象牙の彫物では右に出る者がいなったという。
どなたか象牙の握りに美事な彫刻のあるカン c a nn e を作って頂けませんでしょうか。