イートンとインディアン・ヘッド

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イートンは、英国の学校名ですよね。代表的な私立校であり、当時、寄宿校でもあります。
日本式に申しますと、中学高校を通しての教育でしょうか。
Et on と書いて、「イートン」と訓みます。イートンはパブリック・スクールなんですが、おしゃれと関係がなくもなくて、「イートン・クロップ」et on cr op 。イートン・クロップは、1920年代に流行した女の髪型。男の子みたいな刈り上げを、「イートン・クロップ」と呼んだのです。その心は、「男子校」。

「知名の Et on i ans を幾多育てた Et on C oll eg e は、蓋し最も貴族的な p ubl ic
sch o ol であるが、1440年の創立當時の趣旨は……………………。

中川芳太郎著『英文學風物誌』には、そのように出ています。昭和八年の刊行。今からざっと九十年前の書物ですが、内容の充実には定評があるようです。
中川芳太郎は、夏目漱石の弟子でもあります。
中川芳太郎は、明治三十九年に、「東京帝國大學」を卒業。この時の卒業論文を読んだのが、夏目漱石。

「中川のが一番えらい………」。

手紙に、そんなふうに書いています。また。

「生意気なところが毫もない………」

とも。
だから、というわけでもないのでしょうが。漱石は中川芳太郎に、フロック・コートを贈っています。

「僕今日中川先生に倫敦製フロックコート一着を献上仕つた。着せてみたらよく似合つた。」

明治三十九年九月六日。森田草平宛の手紙に、そのように書いています。余談ですが。
森田草平と、中川芳太郎は、同級生。

イートンが出てくる小説に、『異郷』があります。平成九年に、加賀乙彦が発表した長篇。
時代背景は、敗戦直後に置かれているのですが。

「尋常科から来た数人はイートン校まがいの制服を着て割合にまとまったグループを作っていた。」

終戦直後、学校ははじまったものの、皆てんでに違った服装だったことに触れているわけです。また、『異郷』には、こんな場合も出てきます。

「男はポケットから刻みタバコを出し『歩兵全書』のページを器用にむしり取って巻きだした。」

これは新宿の闇市で偶然知り合った「男」の仕種として。時代は、昭和二十年のこと。
その頃、煙草を自分で巻くのは、珍しいことではありませんでした。いちばん良いのは、
インディアン・ペイパー。それで、英語の辞書を破って、巻いたりしたものです。
「ここの頁はもう覚えたから」なんて嘯きながら。
インディアン・ペイパーもあれば、「インディアン・ヘッド」も。
インディアン・ヘッド ind i an h e ad は、光沢のある、コットン地のこと。戦後間もなくの日本でも流行したものです。
もともとは、シーツ用生地につけられた商品名。
アメリカ、ニュウ・ハンプシャーの、「ネイシュア」社が開発した生地。1831年頃に。
1871年には登録商標名になっています。
どなたかもう一度インディアン・ヘッドを再現して頂けませんでしょうか。

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