シャンパンとシアサッカー

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シャンパンは、おしゃれな飲物ですよね。白ワインとシャンパンはよく似ています。
というよりもシャンパンは、ヴァン・ブランの仲間なのですからね。でも、ここにひとりの美女がいるとして。片手に白ワインを持っているのと、シャンパンを持っているのとでは、かなり意味あいが違ってきます。
勝手な男心としては、「シャンパン美人」のほうにお近づきになりたい。まったくもって、不思議な作用であります。
シャンパンを飲むと、微かに、酔う。このシャンパンならではの、「微かな酔い」もまた、心地よいものです。シャンパンの微酔。微酔の前には、「微醺」という言葉があったんだそうですね。「微醺を帯びて」とかなんとか。でも、「微醺」はなんだかお侍には、似合いそう。
「微酔」は美女にもふさわしい。いや、男の本音を申しますと。「微酔の美女」ほど魅力的な存在はないでしょう。
瀧澤敬一が昭和二十九年に出した随筆集に、『シャンパンの微酔』があります。この本には、フランス語の題も添えられていて。
「ラ・グリセリイ・デュ・シャンパーニュ」。
そんなふうに書いたいます。瀧澤敬一は、元「横濱正金銀行」にお勤めで。以来、長くリヨンのお暮しになった名文家。リヨンにお詳しいのも、当然でしょう。
『シャンパンの微酔』には、「ジャカールの國」と題する随筆が含まれていて。

「ジョゼフ・マリー・ジャカールはリオン南郊ウーランの産でメチエ・ジャカールの發明はナポレオン一世のときであった。その名聲がアメリカまで聞こえ高給で招かれたにも拘らず固辭し、貧しい一機械工として郷土を去らず一生涯織機の完成に努力したのである。」

こんなふうにはじまって、延々とジャカールの歴史を語っています。
フランス語の「ジャカール」が、私たちのいうジャカードであること、言うまでもないでしょう。というよりも、ジョゼフ・マリー・ジャカールの名前から、英語の「ジャカード」が生まれているのですが。
シャンパンが出てくる小説に、『海流のなかの島々』があります。もちろん、ヘミングウェイですよね。

「身づくろいが全部おすみになってから、またここに来てちょうだい。リッツ・バーでシャンペンでも飲みましょう。」

で、結局、1915年の「ペリエ・ジュレ」を二人で二本飲むのですが。
また、『海流のなかの島々』には、こんな描写も出てきます。

「着ている白リンネルやサッカー地の背広の肩に、FBI の肩章をつけているようなものだ。」

FBI の一員であることを隠そうとして、かえってそのことを目立たせてしまっている、という表現なのです。
文中の「サッカー」は、シアサッカー s e ers uck er のことかと思われます。
シアサッカーは、十八世紀に、ペルシア語の「シル・オ・シャカー」
s ir o s ak ar から英語に取り入れられたものらしい。ペルシア語での意味は、「ミルクと砂糖」だったという。
もともとは、絹織物で、アメリカに伝えられてから、コットンでも織られるようになったものです。
シアサッカーの上着で、シャンパン。もちろん、異議なしですよね。

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