紫陽花は、美しいものですよね。第一、見ていて飽きることがありませんからね。青かと思えば紫で、紫もやがては藤色になったり、桃色になったり。
紫陽花は大きく分けて、花紫陽花と萼紫陽花とがあるんだとか。そして、花紫陽花の原種が、萼紫陽花なんだそうですね。
花紫陽花をよく見ていますと。必ず四枚の花弁になっています。ここから「四葩」の名前があるわけです。俳句などにも紫陽花の古語として用いられたりも。
昔むかしは、「アヅサキ」と言ったらしい。それは「サアキ」を「アツム」の意味として。「サアキ」は、「真っ青」のこと。この真っ青をたくさん集めた花なので、「アヅサキ」だったらしい。
1960年の日活映画に、『あじさいの歌』があります。石原裕次郎と芦川いづみとの共演による青春映画。
石坂洋次郎の小説、『あじさいの歌』を映画化したものです。主人公の名前は、河田藤助。二十七歳の画家という設定になっています。この河田藤助を映画の中で演じるのが、もちろん石原裕次郎。では、河田藤助はどんな恰好をしているのか。
「黒い開襟シャツに黒のベレー帽、白っぽい木綿の縞ズボン、白の皮靴という服装で、足は長く……………。」
石坂洋次郎著『あじさいの歌』には、そのように説明されています。
明治二十九年に、泉 鏡花が発表した短篇にも、『紫陽花』が。これは氷売りの少年が出てくる物語。
「………小川流れて一本の桐の葉茂り、紫陽花の花、流れにのぞみ……………。」
泉 鏡花は、「一本」と書いて、「ひともと」と訓ませているのですが。
泉 鏡花が大正三年に発表した小説に、『日本橋』があるのは、ご存じの通り。この中に。
「………お千世が何時着る、紅と浅黄と段染の麻の葉鹿の子の長襦袢を、寝衣の下に褄浅く……………。」
「お千世」はかなり凝って長襦袢を着ているわけです。「麻の葉」は柄の名前。その麻の葉文様を、鹿の子絞りで仕上げているのですから。
「麻の葉」は、日本で生まれた、伝統柄、古典柄。少なくとも平安時代にはあったらしい。
麻の葉を幾何学模様に仕上げた文様のことです。これまた飽きのくることの柄でもあります。
どなたか麻の葉のシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。