タモシャンターとタキシード

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

タモシャンターは、スコットランドの民族帽子のひとつですよね。
t am o‘ sh ant er と書いて、「タモシャンター」であるのは、言うまでもないでしょう。これは、スコットランドの詩人、ロバート・バーンズが1790年に書いた詩から出た言葉です。その意味は、「シャンター村のタモ」になります。
シャンター村のタモが、妖精に追われれて川に逃げこむ物語。「シャンター村のタモ」はスコットランドの民族帽をかぶっていたので、いつしかベレエに似た帽子を「タモシャンター」と呼ぶようになったものです。
「シャンター村のタモ」。これに近い言い方は、昔の日本にもあったらしい。たとえば、「中村村の小次郎」。ただ小次郎では分からないので、「中村村の小次郎」。それが時代とともに短くなって、「中村小次郎」。そんなこともあったのではないでしょうか。
タモシャンターが出てくるミステリに、『生ける死者に眠りを』があります。1933年に、英国の作家、フィリップ・マクドナルドが発表した物語。

「後頭部にのっているのはびっしょり濡れたタモシャンターらしきもの。」

これはある雨の日の若い女性の様子。

彼女は足もとには、「ガロッシュ」。ガロッシュ g al osh は「上靴」のこと。靴の上に履く靴。主に防水用として。靴に対するレインコートとでも言えるよいでしょうか。
第二次世界大戦前はよく「ガロッシュ」を使ったもの。今ではほとんど見かけることはありませんが。
フィリップ・マクドナルドの『生ける死者眠りを』を読んでおりますと、こんな場面も。

「ディナージャケットのボタンを留めると、彼は勢いよく扉を開き、中に入っていった。」

これはイギリスが背景なので、「ディナージャケット」なのですね。もし同じことがアメリカで行われていたなら、「タキシード」となっていたに違いありません。
アメリカ語といえば、「タム」があります。タモシャンターを短くしての、アメリカ英語。「タム」は可愛い女の子に似合いそうな印象があるようです。
タキシードが出てくる小説に、『大津順吉』があります。大正元年に、志賀直哉が発表した物語。

「………燕尾服からタキシードと順々に紹介された。」

もちろん大津順吉が紹介される場面。大津順吉自身は平服なのですが。この中に、「踊り靴」の表現も。たぶん、「ボール・シューズ」のことかと思われるのですが。

志賀直哉が大正六年に書いた短篇に、『赤西蠣太』があるのは、ご存じの通り。この短篇には、「鱒次郎」や「安甲」も出てきます。海のものばかり。
長谷川町子はもしかして、志賀直哉の『赤西蠣太』に目を通していたのではないでしょうか。
まあ、勝手な想像はさておき。どなたか完全なるタキシードを仕立てて頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone