ロウルズ・ロイスとロール・ネック

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ロウルズ・ロイスは、たいていの人にとって、憧れの車ですよね。
R olls R oyc e と書いて、「ロウルズ・ロイス」と訓むんだそうですが。
ことにほんとうにロウルズ・ロイスに乗るようなお方は、「ロウルズ」と省略することが多いんだとか。
ロウルズ・ロイスに乗ることは、ふつう後部席に。お抱え運転手に運転してもらうわけですね。このお抱え運転手のことを、「ショウファー」と言います。
ショウファー ch a uff e ur は、1899年頃からの、英語。もともとはフランス語で、「ボイラーマン」の意味があったそうです。
十九世紀のフランスでは、「火夫」がいた。火を焚いてくれる人。ボイラーマン。このボイラーマンの手隙の時に、車を運転してもらうことがあったので、いつの間にか、「お抱え運転手」の意味にもなったんだそうですね。

ロウルズ・ロイスが出てくる小説に、『大番』があります。昭和三十一年に、獅子文六が発表した長篇小説。ただし、物語の背景は、昭和初期に置かれているのですが。
『大番』は、当時の「週刊朝日」に連載された物語。連載中から人気沸騰した小説でもあります。そのために予定を超えて連載されたという。
物語の主人公は、赤羽丑之助。人呼んで「ギューちゃん」。ギューちゃんは、兜町の相場師。買って買って、買いまくる相場師。それが当たりに当たって、大金持ちになるというストーリー。また、ギューちゃんは破天荒な性格でもあって、すべてに「大番」なお人柄だったらしい。
この「筋」でウケないはずもなく。昭和三十二年に、映画化。当時の加藤大介がギューちゃんに扮して、拍手喝采。
この小説、映画が当たったために、その頃、日本全国に、「大番」という店名が一気に殖えたそうです。
昭和三十七年には、フジTVで『大番』のドラマ化。このTVの『大番』でギューちゃんを演じたのが、渥美 清。渥美 清の出世作ともなったという。

「おウ、ロールス・ロイスでも何でも、買うたるわい!」

獅子文六著『大番』には、そんな科白が出てきます。もちろん、ギューちゃんの言葉として。
これは部下のひとりが、結婚することになって。結婚祝いをおねだりする場面。

「社長、結婚の記念に、新車を一台、フンパツして下さいよ」

これに対するギューちゃんの答えが、「おウ、ロールス・ロイスでも何でも、買うたるわい!」だったのですね。

ロウルズ・ロイスが出てくるミステリに、『シングル&シングル』があります。1999年に、イギリスの作家、ジョン・ル・カレが発表した長篇。

「角を曲がると、縁石に沿ってショーファー付きのロールスロイスが何台か、まるでマフィアの葬列のように並んで停まっているのが見える。」

また、『シングル&シングル』には、こんな描写も出てきます。

「模造宝石、永久時計、ノルウェー製タートルネック……………。」

これは「サニー」の持物として。「タートル・ネック」はふつうアメリカ英語とされます。イギリス英語では、「ロール・ネック」と呼ぶことが多いのですが。日本語では、「トックリ首」とも。徳利の形に似ているからです。

「………もう一人の方は、鼠色のトックリ・ジャケツにコールテンのズボンという、イデタチだった。」

獅子文六著『大番』には、そんな一節も出てきます。
ここでの「ジャケツ」は今の、スェーターに近い言葉です。
どなたかパール・グレイのロール・ネックを編んで頂けませんでしょうか。

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