トムは、人の名前にもありますよね。もともとの名前は、トオマスなのでしょうか。
ドイツの文豪、トオマス・マンも、トムと呼ばれたことがあるのでしょうか。
誰もがよく知っている「トム」に、トム・ソーヤーがあります。もちろん、マーク・トウェインが生んだ魅力的な少年の名前ですね。
『トム・ソーヤーの冒険』が発表されたのは、1876年、トウェインが四十一歳の時のことであります。
「帽子もしゃれているし、きちんとボタンをかけた青い上着も新品でスマート。細身のズボンもしかり。その上靴まではいている。」
『トム・ソーヤーの冒険』には、そんな一節も出てきます。
これはトム・ソーヤーから眺めての新入りの同級生の着こなしについて。
今も、『トム・ソーヤーの冒険』を開くのは、楽しい。挿絵がちりばめられているので。
この挿絵を描いたのが、当時の絵師、トゥルー・ウィリアムズ。トウェインの草稿をもとに仕上げたもの。
トウェインは、ウィリアムズの挿絵を観て、驚いた。
「よくぞまあ、こんなに克明に描けたものだ」
マーク・トウェインの出世作は、『ジム・スマイリーとその跳び蛙』。1865年、ニュウヨークの『サタデイ・プレス』に発表。これが拍手喝采となって、作家の道が開けたんだそうです。
トウェインの『ジム・スマイリーとその跳び蛙』は、サンフランシスコのバアで聞いた話がもとになっています。
当時のサンフランシスコは一攫千金を狙う男たちが集まる場所。夜な夜な「トール・テイル」が。要するに、ほら話なのですが。
作家は時にはバアに行くべきなのでしょうか。それともトウェインの筆が優っていたのでしょうか。
トムと名のつく作家に、トム・ヒレンブラントがいます。
1972年、ハンブルクの生まれ。そのトム・ヒレンブラントが、2014年に発表したのが、『ドローンランド』。
『ドローンランド』を読んでおりますと、こんな描写が出てきます。
「雨水がしたたるトレンチコートをフックにひっかけ、彼女の向かいにすわって言った。
「ごめん」
約束の時間に遅れていたので。場所は、「カフェ・アムステルダム」で。相手の女性は、「アヴァ」。時間は、朝の9時10分。
主人公の、ヴェスターホイゼンは、主任警部という設定ですから、トレンチコートもあたりまえなのでしょう。
1960年頃の銀座に、「チロル」という店がありました。舶来の登山用品専門店。この「チロル」では注文で、特別のトレンチコートを仕立ててくれたものです。
無双のトレンチコート。裏も表もギャバジンで仕立てられた二重の、トレンチコートだったのです。
どなたか無双のトレンチコートを仕立てて頂けませんでしょうか。