シャツと繻子

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シャツは、ワイシャツのことですよね。
では、「シャツ」なのか、「ワイシャツ」なのか。
シャツは、英語式。ワイシャツは、日本語式とも言えるでしょうか。
幕末の横濱で、異人が「ホワイト・シャーツ」と言ったのを耳で聞いて、「ワイシャツ」となったと、考えられています。
ただ、ひとつ紛らわしいのは、単に「シャツ」と言った場合。下着としてのシャツと混同されないか、という問題がありそうですが。

「古ぼけた紺の背廣から、白い襯衣の襟をのぞかせて、毛繻子らしいネクタイを無造作に結んでいるその様子が………」

1934年に、豊島与志雄が発表した小説『道化役』に、そのような一節が出てきます。
これは久々に偶然出会った、「村尾」に対する「島村」の感想として。
豊島与志雄は、「襯衣」と書いて、「シャツ」のルビを添えています。
「襯衣」は、明治語。つまり、明治の時代には「シャツ」と呼んでいたのですね。

「梅雨冷えとでもいうのか、ワイシャツ一枚では、はだ寒い感じである。」

1951年に、永井龍男が書いた短篇『風ふたたび』に、そんな文章が出てきます。
これは車内で弁当を開いている場面として。
永井龍男の『風ふたたび』を読んでおりますと、こんな描写も。

「その通路を、濃紺のスカートに、シャツ・ブラウスの女が………」

この時の永井龍男の頭の中では。男は「ワイシャツ」、女は「シャツ・ブラウス」という印象があったのでしょうか。

シャツが出てくる短篇に、『ハンス・プファルの冒険』があります。1835年に、エドガア・アラン・ポオが発表した物語。

「親猫にコップ一杯の水を与えようとして弁に手を通したとき、バスケットを支えていた環にシャツの袖がひっかり………」

これは気球に乗って、宇宙を旅している場面なのですが。
また、『ハンス・プファルの冒険』には、こんな一節も出てきます。

「………空色の繻子のゆったりとした外套を身にまとい、膝のところを銀の留金で締めた、外套によく似合うきっちりしたズボンをはいていた。」

これは主人公が、途中で会った男の着こなしとして。
繻子は、サテンですね。光沢の美しい絹地。
どなたか繻子のオーヴァーコートを仕立てて頂けませんでしょうか。

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