キッドとキャメル

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キッドは子山羊の革のことですよね。kid と書いて、「キッド」と読みます。
「キッドの手袋」なんていうではありませんか。しなやかで、光沢のある、薄い革のことです。つまり伸縮性の高い革でもあります。
手袋以外にも、おしゃれな靴の材質としても、用いられるものでしょう。

キッドはまた、人の名前にもあります。たとえば、リンゴ・キッド。リンゴ・キッドは、実在の人物。アメリカ西部開拓時代のアウト・ロー。
リンゴ・キッドが出てくる名作に、『駅馬車』があります。1939年の西部劇。ジョン・フォードの監督。ジョン・ウエインの主演。
というよりもリンゴ・キッドに扮するのが、若き日のジョン・ウエインなのです。
『駅馬車』の中で。走る馬から、走る駅馬車に乗り移る場面があります。あれはスタントマンなしで、ジョン・ウエイン自身の演技だったという。
『駅馬車』が日本に入ってきたのが、1940年。原題の『ステイジ・コーチ』に、『駅馬車』の邦題を考えたのが、淀川長治。結果として『駅馬車』は、拍手喝采だったという。

キッドが出てくるミステリに、『夜は千の目を持つ』があります。1945年に、アメリカの作家、ウイリアム・アイリッシュが発表した長篇。

「ウインドーに金のキッド皮ノイヴニング・シューズがあるでしょう。ちょっと見せていただけない?」

これは若い女性、ジーン・リードが靴を買う場面として。実際、サイズもぴったりだったので、キッドの靴を購入するのですが。
『夜は千の目を持つ』を読んでおりますと、ジーン・リードのお父さんのオーヴァーコートが出てきます。

「父はキャメルのコートの襟を立てていた。若い人のように………。」

お父さんの名前は、ハーラン・リード。富豪。
少なくとも1930年代のアメリカで、キャメルの外套が流行ったことが、想像できるでしょう。キャメルは、軽くて、暖かく、高価でもあったから。
どなたかキャメルの外套を立てて頂けませんでしょうか。

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