カフス釦は、シャツの袖口を留めておくためのボタンのことですよね。
「カフ・リンクス」とも言います。ただし、ダブル・カフの場合に限って、カフ・リンクスが必要なのです。
シングル・カフなら、すでに専用の貝ボタンが用意されていますから。
この「貝ボタン」を実用的すぎると、考えるお方が、ダブル・カフをお好みになるのでしょう。
今のカフス釦があらわれたのは、英国の十七世紀のことだったらしい。
「ダイヤモンド入りのカフ・ボタン………」
1684年の『ロンドン・ガゼット』には、そんな文章が出ています。。
1680年代には、「カフ・ボタン」と呼ばれたようですね。
カフ・ボタンから「カフ・リンクス」の名前になったのは、1788年頃からのことのようです。
では、カフス釦以前には、どうしていたのか。専用の細紐を穴に通して結んでおく。「スリーヴ・ストリングス」。そんな形式が多かったらしい。
まあ、紐結びに較べれば、カフス釦のほうが楽だったでしょう。
カフス釦が出てくる小説に、『五彩のヴェール』があります。1925年に、サマセット・モオムが発表した物語。
「彼女はタウンゼントのカフス釦やチョッキの釦を気をつけて見た。カルティエの店で眼についたのに似ていた。」
これは「キティ」という女性から眺めての、タウンゼントの着こなし。
この場合の「チョッキの釦」は、カフス釦と揃いになったものだったのでしょう。
また、『五彩のヴェール』には、こんな一節も出てきます。
「ロンドンの芝居のこと、アスコットやカウズのこと………」
これは夕食での話題について。
「ディナー・ジャケット」の言い方、1898年頃から一般的になったという。それ以前の1888年頃には、「ドレス・ラウンジ」と呼ばれたものです。
さらに、その前は、「カウズ」。当時のカウズは、王室専用ヨットの停泊地で。この王室専用ヨットでの夕食の際、皇太子が着用した略式の服装だったからです。
どなたか1880年代のカウズを再現して頂けませんでしょうか。