タイプライターは、印字機のことですよね。下に並んだ文字盤を押すと、それが活字になってあらわれる機械のことであります。
今のコンピュータの前には、タイプライターが大いに活躍したものです。もっとも今日のパソコンの文字の配列は、タイプライターを基本にしたものなんだそうです。
タイプライターの登場は、1713年の英国だとか。ヘンリー・シルという人物によって、考案されたという。
その後、いく変遷の改良の改良を経て。1873年に、アメリカでより実用的なタイプライターが完成。これを大々的に販売したのが、「レミントン」。1876年のことであります。
明治二年に。鍋島家では、舶来品のタイプライターを所有していたそうですね。
「公等はタイプ、ライターに過ぎず。しかも欲張つたるタイプ、ライターなり。」
1908年に、夏目漱石が発表した小説『三四郎』に、そのような一節があります。
当時の大学生を指して漱石は、そのように、言っています。漱石は、「タイプ、ライター」と書いているのですが。
「………今日は伊太利人がマカロニーを如何にして食ふかと云ふ講義を聞いた」
そんな会話も出てきます。当時の東大は粋な講義もあったのでしょう。
「それから僕の下で働いてゐるタイピストは可成り英語ができるよ。」
1925年に、今 東光が発表した小説『痩せた花嫁』に、そのような文章が出てきます。
これはその頃の横濱の銀行での話として。
タイプライターが出てくるミステリに、『日時計』があります。
それは住所の署名もない、タイプライターで打った手紙だった。」
『日時計』は、1957年に、クリストファー・ランドンが発表した物語。日本語訳は、丸谷才一。この『日時計』を読んでおりますと、こんな一節も出てきます。
「いちばん古ぼけたズボンをはき、焦茶いろのダッフル・コートを着る。」
これはロンドンの探偵、ハリー・ケントが、夜の偵察に行く場面として。
十九世紀はじめのダッフル・コートには、前身頃に美しい刺繍が施されていたそうですね。
ダッフル・コートはもともと北海の漁師の作業着で。それを都会での街着にするに際して、そんな工夫もあったのでしょう。
どなたか刺繍をあしらったダッフル・コートを仕立てて頂けませんでしょうか。