スプーンは、匙のことですよね。「さじ」とも、また「かい」とも訓むんだそうですが。
なぜ匙が「かい」なのか。これは、たぶん「貝」と関係しているのでしょう。
古代の日本では、貝殻をスプーン代りに使ったことがあるのではないか。今でも貝殻に竹などの取手をつけて、スプーンにしている店もあるようです。
貝とおしゃれも関係がありまして。たとえば、「貝の口」。男が着物を着るとき、帯は「貝の口」に結ぶことになっています。帯を結んだ形が貝の口に似ているから。
昔話ではありますが。「スプーン曲げ」が話題になったことがあります。たとえば、「スプーン曲げ少年」だとか。ごくふつうのスプーンをあっという間に曲げてしまうのです。時にはスプーンの頭がぽろりと落ちてしまうこともありました。
この「スプーン曲げ少年」を真面目に取り上げた小説に、『スプーン曲げ少年』があります。1985年に、安部公房が発表した純文学。
物語の主人公はなぜか、「スプーン曲げ少年」に興味を抱き。少年を追って追って、ついに自宅で取材する物語になっています。
「スプーンの首がぽろりと折れて机の上にころがった。」
安部公房著『スプーン曲げ少年』には、そのように書いてあります。
これは、すべての取材が終えて。主人公が食堂で食事する場面。「少年」はたまたまカレーを注文する。
ふと主人公が気づくと、少年が使っていたスプーンの首が折れていた場面なんですね。
スプーンが出てくるミステリに、『服用禁止』があります。1938年に、英国の作家、アントニイ・バークリーが発表した物語。
「……四時間ごとにスプーン一杯を服用のこと。」
これは、患者に与える薬の内容として。また、『服用禁止』には、こんな描写も出てきます。
「………何らかの職業的地位にあることをうかがわせるストライプのズボンを穿いていた。」
これは、富豪のシリル・ウォーターハウスの着こなしとして。
たぶん「縞ズボン」のことでしょう。英語では、「ストライプト・トラウザーズ」。
これは、故き佳き時代の乗馬ズボンをお手本としたものです。
どなたか完璧なストライプト・トラウザーズを仕立てて頂けませんでしょうか。