キッチンは、台所のことですよね。昔は、「勝手」とも言ったらしい。今に、「勝手口」の言い方が遺っているではありませんか。
世の中には、キッチン好きのお方と、そうでもないお方とがいらっしゃるようです。キッチン好きということは、料理好き。料理のお上手なお方。
朝、昼、晩。お料理好きはどうかすると、一日の大半をキッチンで過ごすこともあるようです。
たとえば、コックオヴァンを煮込みながら、赤ワインを傾けることもあるでしょう。キッチンでの食前酒。
私もキッチンでの食前酒、大好きです。
食前酒からの連想なのですが、ホームバー。昭和三十年代に、「ホームバー」が流行ったことがあります。この「ホームバー」は、当時のカクテルの流行とも関係していたのでしょう。
カクテルが自宅のホームバーで飲める。これは昭和三十年代の家庭人にとっては夢物語だったのでしょう。
たとえば、ちょっとした本棚くらいの大きさで。あちらこちらを開けたり開いたりすると、たちまちに「ホームバー」になってくれる代物だったのです。
キッチンが出てくるミステリに、『セメント・ガーデン』があります。
1978年に、イギリスの作家、イアン・マキュアーンが発表した物語。
果物を盛ってある容れ物から林檎一つ取り上げ、ぼくはキッチンに向かった。」
またマキュアーンの『セメント・ガーデン』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。
「黒いギャバジンのレインコートを着て、ウエストをベルトで締め上げ、襟を立て………」
これは、「ジュリー」という男の着こなしとして。
たぶん「ギャバディン」ga bardine のことかと思われます。
このギャバディンは、「ギャバディン」gaberdine と関係ある言葉です。
こちらの「ギャバディン」は、ユダヤ人が巡礼の旅に羽織ったフード付きのマントのこと。
十九世紀に、トオマス・バーバリーが防水地を完成させた時、ギャバディンにまったく新しい意味を吹き込んだのです。
どなたかシルク・ギャバディンでスーツを仕立てて頂けませんf。