メリヤスとメルトン

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メリヤスは、ジャージーのことですよね。織物に対して、編物。二本の糸に対して、一本の糸で完成させるもの。
コットン・ジャージーもあれば、ウール・ジャージーもあり、また、シルク・ジャージーもあります。
二十世紀のはじめ、ココ・シャネルがファッション革命を起こしたのも、主にシルク・ジャージーの力によるものでしょう。
メリヤスが日本に伝えられたのは、十七世紀の、延宝年間とのことですから、古いものですね。
昔の日本では、「莫大小」の宛字を使ったという。その意味は、「大小無し」。着物地に較べて、伸縮性のあることが強調されたのでしょう。

はきごこちよし めりやすの足袋

江戸期には、そんな一句があったらしい。足袋に伸縮性があったなら、何かと便利でもあったでしょう。
メリヤスの伸縮性。ここから、自由に弾いて、自由に歌う小唄のことも、「めりやす」と呼ぶことがあったそうですね。

「正太の所望で、三人の妓は三味線の調子を合せて、古雅なメリヤス物を弾いた。」

明治四十四年に、島崎藤村が発表した小説『家』に、そのような一節が出てきます。ここでの「メリヤス物」は、小唄のめりやすのことだったのでしょう。

「叔父の商売はめりやす屋だとか云つた。いづれにしても金に困らない人なのだろう。」

大正元年に、夏目漱石が発表した小説『行人』に、そのような文章が出てきます。
明治期のめりやす屋が繁盛したことを窺わせる文章になっています。

夏目漱石が、明治四十五年に発表した小説が、『彼岸過迄』。これを読んでおりますと。こんな描写も出てきます。

「其教師はつい此間英国から帰つた許の男であつたが、黒いメルトンのモーニングの尻から麻の手帛を出して、鼻の下を拭ひながら………」

ここから想像いたしますと、明治末期にはメルトンのモーニング・コートが多くあったものと思われます。
「メルトン」 Melton  は、1891年頃の英語。もともとは当時のハンティング・プレイスだったメルトン・モーブレイに由来する布地。
最初はハンティング・コートの生地だったのです。
どなたかメルトンのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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