仮面とカラア

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仮面は、マスクのことですよね。昔は、「仮面舞踏会」なども珍しくはなかったらしい。「マスカレエド」というではありませんか。
小説にも仮面は出てきます。たとえば、『仮面の告白』。1949年に、三島由紀夫が書いた物語。伝記でもあるかのような創作になっています。

「フランネルの襦袢・クリームいろの羽二重の下着………」

はじめて自分が着せられた着物について。なんとまあ、記憶のよろしいことか。

「………内がわから見てゐると、ふちのところにほんのりと光がさしてゐた。」

これは産湯を使うときの盥の様子。三島由紀夫にとっては、産湯の光景を憶えているというのですから、記憶どころの騒ぎではありませんか。
いずれにしても三島由紀夫は、伝記までも創作にしてしまう手品師だったことは、いうまでもないでしょう。

明治四十二年に、森 鷗外が発表した戯曲に、『假面』があります。
『假面』の主人公は、「杉村 茂」という医学博士になっています。杉村 茂は、どんな服装なのか。

「………八時髭、鼻目金、黑洋服。歳は四十ハ九。」

ト書きには、そのように説明されています。明治の医者はハイカラですから、すでに西洋服だったのでしょう。そして西洋服の下のシャツはどんなふうだったのでしょうか。

明治四十四年に、森 鷗外が翻訳した短篇に、『襟』があります。原作はドイツの作家、オシップ・ディモフが書いた小説。
題名に『襟』とあるように徹底して「襟」が出てくる創作。こんなカラアばかりの物語も珍しいのではないでしょうか。

「………上等のオランダ麻で拵へた、良い襟であつた。オランダといふ丈は確かには分からないが、番頭は確かにさう云つた。」

これはベルリンのシャツ屋で誂えたカラアについて。一ダース、7ルーヴルなので、二ダース注文したとも書いています。
余談ながらサイズは、39号だったとも。
おそらく、ハイ・カラア、ハード・カラアだったでしょう。
どなたか白麻のハイ・カラアのシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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