ドゥルオーは、パリの骨董屋ですよね。あるいは、オークション・ハウスというべきなのでしょうか。正しくは、「オテル・ドゥルオー」。
オークション・ハウスといえば、「サザビーズ」や「クリスティーズ」が有名です。が、「オテル・ドゥルオー」もまた、知る人ぞ知る穴場なのであります。
ドゥルオーが出てくる小説に、『青いパステル画の男』があります。2007年に、アントワーヌ・ローランが発表した創作。
主人公の「ショーモン」は、弁護士で、骨董品マニア。ドゥルオーが出てくるのも、当然でしょう。
「私の事務所はドゥルオーから五十メートルの距離にあり、この立地が事務所選定の決め手となった。」
いかに、ショーモンがドゥルオーを愛しているのかが、よく分かるでしょう。それにしても、なぜドゥルオーなのか、オークションなのか。
「オークションはどんなアルコールでも感じることができない陶酔感を与えてくれる。それでいてカジノとは対照的に負けた時でも少し勝ったような気がするのだ。」
著者はそんなふうにも書いています。
アントワーヌ・ローランは、1972年にパリに生まれて。作家になる前は、骨董品屋で働いていたという。オークションのことなら、裏も表もご存じなのでしょう。
『青いパステル画の男』には、「ショーモン」の子供時代の話も出てきます。
「当時の私が欲しかったのはジーンズだけだったが、通っていたクール・ハッテマーはデニム生地を禁じていた。」
「クール・ハッテマー」は、私立の名門校。
それで、「ショーモン」はどうしたのか。
「………グレーのフランネルのズボンとマリンブルーのブレザーを私の気持ちなどとんとお構いなしに購入した。」
お母さんが。お母さんが好きな店は、「オールド・イングランド」。それで「ショーモン」はすっかり紺のブレイザーが嫌いになったという。いやあ、もったいない話ですねえ。
でも、少年がデニムを着たい気持もよく分かりますが。デニムdenim
が、フランス語の「セルジュ・ド・ニーム」から出ているのは、広く識られている通り。「ニーム産のサージ」から来ているわけですね。
ただし、今のフランス語では、「トレイジ」trill is となるんだとか。これはラテン語の「トリレキュス」triicius
と関係ある言葉なんだそうです。
どなたかトレイジのブレイザーを仕立てて頂けませんでしょうか。