サークルとサテン

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サークルは、「円」のことですよね。circle と書いて「サークル」と訓みます。サークルはサーカスとも関係があるらしい。
円形劇場で行われるからでしょうか。フランスでも「シクル」といえばサーカスの意味になります。
サークルはまた、「同好会」の意味でも。同じ趣味の人たちが円環のように集うからでしょうか。

「………昔は是れでも何の某といや、或るサークルでは一寸名の知れた文士だった。」

明治四十年に、二葉亭四迷が発表した小説『平凡』に、そんな一節が出てきます。これは「私」のこと。
「私」は今年、三十九歳。それで自分のことを老人だと思っているのですね。
明治四十年頃の三十九歳は「老人」だったのでしょうか。

「中學の學窓や親の家や友達のサアクルや世離れた寺の本堂などで………」

明治四十ニ年に、田山花袋が書いた小説『田舎教師』に、そんな文章が出てきます。田山花袋は「サアクル」と書いているのですが。
ここでの「田舎」は、当時の「発戸」におかれています。その時代には、織物が盛んだったようです。

「糸を繰る座繰の音がしゅう雨のやうに彼方此方からにぎやかに聞こえる。」

町の様子をそんなふうに書いてあります。

円形が出てくる小説に、『女であること』があります。昭和三十一年に、川端康成が発表した物語。

「………淡いピンクのブラウスに、紺の圓形のスカアトを着て、さかえが下におりて来た。」

「圓形のスカアト」。たぶん、「サーキュラー・スカート」のことかと思われます。
また、『女であること』には、こんな描写も出てきます。

「白いサテンのシナ服を着た中國の代表が、明るい照明と拍手のなかに立つてゐた。」

いいですねえ、サテンのドレス。日本語の「繻子」のことです。satin と書きます。光沢の美しい絹地。
男のディナー・ジャケットの拝絹にもよくサテンが用いられます。あれはもともと裏地だったものです。滑りがよく、丈夫なので、裏地にも用いられたのでしょう。
どなたか白いサテンで上着を仕立てて頂けませんでしょうか。

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